「君は……」
続く言葉は、言わずもがな
それ以外に何という
「馬鹿だ、とそう言いたいのだろう」
「……なんだ、自覚あるんだ」
自嘲を込めて続けた言葉は、思っていた通りの笑顔に肯定された
「…………」
何をやっているのだろうとは思う
何を本当はすべきなのかは分かっている
こんなところで自分の失態を曝け出して、皮肉を貰っている場合ではない
けれど、身体と違って自分が思っていたよりも冷たくも頑丈でも無い精神は、それを拒んでいた
「メタル」
冷ややかな目が、気だるそうにこちらを見る
「……お前が言いたい事は分かる。けれど俺は今、それが実行できそうにない」
「ふうん……じゃあ、僕がそんな君に対してどう思っているかも分かるよね?」
「意気地無し……か?」
自分でもそう思うのだ
思われていても当然だろう
「惜しい。正解はヘタレ、さ」
「…………」
ある意味、意気地無しよりも屈辱的な響きだ
しかし、今の自分にはお似合いだろう
「……ねぇ、メタル。変わるって大変だね」
「変わるって言ったって、本質から変わる訳じゃない。色々な物の許容範囲が広くなったり、又はその逆だったり……その程度さ、きっと」
本質は変わらない
まったくもってその通りだろう
それが変わればきっと……もう、自分ではないのだから
「だから丸くなっても君は残忍だし、僕の無関心もある程度は治ったけど――君のお陰でね――多分完治する事は無い」
「…………そうだな」
己の欲望だけを優先して、その結果がこのどうしようもなさ
あの時一瞬だけは、このまま――そう思いもした
「でもさぁ……」
何かを確かめる様に、バブルは俺の顔……正確には目を、見つめる
その視線が刺さるようで、俺は反射的に顔を背けてしまった
「君は、やっぱり変わったね。きっと、あの時より」
あの時……多分、バブルと今日の様に話すようになったあの日の事だろう
変わると約束した、あの日
「……そう……だろうか」
「そうさ。メタル、前から思ってたけど、君は自己認識が甘いんじゃない?今まで、こんな風に後悔することも、懺悔することも……許して欲しいと思う事も無かった癖に」
……そう、そうだ
いつの間自然とそうすることが出来る様にっていたんだろう?
いや、今はそんな事はどうでも良い
「……なぁ、バブル」
後悔している
懺悔をした
残すのは、あと一つ
「今まで俺は……多分、勘違いをしていた」
「へぇ?何をさ」
「お前に『残忍になった』と言われてから……俺は、それを抑え込むことだけを考えていた。今でもそんな面があることを知られたら、きっと嫌われると」
良いところだけを見せて、耳に優しい言葉だけを囁いて、形の良いものを与えて
それが恋愛なのだと、そう信じていた
「だから……ある意味、これで良かったのかもしれない。勿論、俺のしたことはロックの意志を無視したものだったが……ずっと勘違いをしているよりは、きっと」
「……ふぅん」
気の抜けたような、生返事
「……なんだ、その目は」
「そこまで自覚できたなら、僕が今聞く事はもうないよ。後は結果だけで良い。だから……」
細くなる目
その下にある瞳は……初めて見る、何かがあった
「早く謝って来いよ!このヘタレ!」
「……ああ」
目を細めて、口角を上げて
……さぁ、もう大丈夫だ
己の過ちを謝りに行く決意は、出来た
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