正義のヒーロー、イコール、








やさしいひと








思考、まとまらない
身体、自由に動かせない
思考、映像の反復
身体、内部温度上昇中


「……うぁ……あ……」


僕の口から漏れるのは、呻き声に似た変な声


「あぁ……」


まだ身体は熱くて、もたれかかった扉の冷たさが全てのバランスを取ってくれているかのよう
それくらい今の僕は使い物にならない


「…………」


ちょっとだけ、落ち着いた
まだそんな気分じゃないけど、どうせそれしか考えられないから仕方ない
考えよう、そしてまとめよう
一体僕は、今、どうしたいんだろう?どうすべきなんだろう?








状況整理
僕は今、突然メタルマンに……キス、されて、逃げてきた
それ以上でもそれ以下でもない、本当にそれだけ
自分でもどうしてこんな事になっちゃったのか、良く分からない
頭の中はこんがらがって、理由が見つからない

……頭が少しずつ、ハッキリしてきた
僕はどうして逃げたんだろう?

困惑しただけ?……違う
嫌だった?……違う
じゃあ嬉しかった?……違う
しっくりくる理由が見当たらない

でも、困惑しただけだったら、ここまで取り乱さない
嫌だっただけなら、分からない筈が無い
嬉しかったのなら、今ここにいない
きっとどれかな筈なのに、どれも僕には納得できない
自分で自分が分からない


「…………」


……そもそも、今更こんな風に悩んでる事自体がおかしいんだ
だってメタルマンが僕の事をどう思って、どうして欲しいと願ってるかって事は、とっくに知っているんだから

言葉に甘えて、態度に甘えて、ずるずるここまできて
なのに逃げ出しただなんてね?
ああ、


「ヒーローだなんて、とんでもない」


優しくもなくて、勇気もなくて
自分を好きだと言ってくれる一人にすら何も出来ない
僕は人間じゃないから『子供だから』なんて言い訳なんか出来ないし、勿論するつもりも無いけれど
言い訳になる理由でもあったら、どれだけ良かっただろう
今の僕には、何一つ出来る事が無い


「……メタルマン」


扉の向こう
もしかしたらまだ立ちつくしているかもしれないし、帰ってしまったかもしれない
それを確かめる勇気は、僕にはなくて
まだ平常まで下がらない体温を持て余して、扉に寄りかかる
……今日の予定は、どんどんズレていく








どう思ってるのか、どうしたいのか、どうすべきなのか
どれもこれも、まだ分からない
でも、一つだけ分かる事
僕というロボットは、きっと誰よりも酷い奴なんだ








だってまだ、貴方をどう思っているのか分からない





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