どうか、俺と共に
そして、それを永遠に








さあ、幸せになろう








「…………」


「…………」


無言で見つめ合う
こうして出てくれただけでも奇跡と言っても良いかもしれない


「まず謝らせてくれ。済まなかった」


「謝る必要なんて……」


「いいや、お前は悪くない……悪いのは、全て俺だ」


「そんな、メタルマン」


「……俺は、ずっと独りよがりを続けてきた。気遣う様な言葉を吐いて、気遣う様な動作をしつつ、決してそんな事はなかった」


恋とは、愛とは独りよがり
そうかもしれないし、そうでないのかもしれない
どちらにしろ、俺が今望むのはそれじゃあない


「今更、気が付いた。俺が望むのはそうではなくて……」


言語と語彙が詰まった電子回路
けれど、それは時として無力になる
例えば今、計算ではどうしようもない想い、感情に機械は無力だ
滑稽な話だ……その想いも感情も、機械同士のものなのに


「……メタルマン」


言葉を探すうちに伏せていた顔を上げる
映る顔は、少し戸惑いと何か他の感情に彩られている


「僕は……その、貴方に甘えてたんだと思う……ううん、甘えていた、んだ」


「ロックマン?」


「貴方は優しかった。優しくしてくれた。だから、僕はあのままでいたかった。それが一番楽で、楽しかったから。勿論分かってた……それは続かない。続けちゃ駄目だって」


茶色の髪が、ふわりと揺れる


「だから、メタルマンが謝る必要なんてどこにもない。寧ろ謝るのは僕の方なんだ。僕は、貴方を困らせた。追い詰めた。僕のあんまり僕らしくない行動で……」


いつの間にか戸惑いの消えた瞳からは、あの時――最初に対峙した『ロックマン』に近い、強さがありありと現れている
それは小さな子供の身体と不釣り合いなほどに強い


「……お前らしくない?」


それに一瞬怯んだ俺の声は、少し上ずった様な色を含む


「……ねぇ、メタルマン。貴方はもしかして、僕に謝る為だけにこうしてきたの?」


俺の疑問を含んだ言葉には答えず、少し顔を逸らして、ロックマンはそう言った


「…………」


何を求められているのか、何故求められているのか、何故答えてもらえなかったのか
その原因を探る、否定する、探り直す、繰り返す
……まさか、都合の良い妄想だ


「……俺は」


けれど、そうだとして今言わず何時言う?
ずっと言い続けてきたこと
それはやはり、変わるものではなく








「どうしてもお前を諦められない。何時までもお前と共にいたいと思っている……だから」








続くのは、もはやお前は聞き飽きたであろう陳腐な言葉
けれど、それ以外に何と言えば良い?
目を見開いて、眉を下げて、肩をすくめて
分かり易いリアクション
表情は、少々呆れられているのが分かるが、穏やかだ


「今更なんだけど……一つ、聞いても良い?」


「ああ」


「……何で、電話なの?」


「それは……まあ、察してくれ。門前払いを食ったら流石に立ち直れない」


面の皮はどちらかというと厚い方だとは思う
けれど、ここで堂々と会いに行けるほどではないのだ
だからこうしてスピーカー越し、画面越しでほんの少し、余裕を作った


「……じゃあ、今からそれを……直接言いに来てくれる?」


クリアな液晶が、歪んだ様な気がした








「お茶を用意して、待ってるから」








「……ああ、そうしたいと思っていたところだ」


よく言われる『直接声が聞きたい』とか、そういう事ではなく、大事なのは『顔を合わせること』
どうせ電子情報でしかない俺たちの声に、直接も何もありはしない
だからこそ、顔を合わせよう
そして、もう一度お前に、言葉を


どうか、俺と共に、





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