彼に毒が回る、その前に
奴が気付く、その前に
愚か者
「ジェミニを弄んで、楽しかったか?」
そう問えば、ニヤリと笑って言った
「勿論」
彼の身に何かあったのだ、と気づいたのは見た瞬間のことだった
己の身に起こった事を必死に隠し、何事もないように振舞う姿に気がついてしまった
「つかよく気付いたな。本人はあんなに頑張って隠してたのに」
「…………」
「……あー、もしかしてシャドー、お前アイツのことが……なぁ?」
ニヤニヤと下衆な笑みを浮かべるスネークの顔はただ一つのことを物語っている
「だから何だ。拙者はお主の暇つぶしなぞにはならん……勿論、ジェミニもだ」
否定はしない
スネークの言わんとする事は紛れもない事実だ
「ふーん……だがな、アイツは俺が先に目ェつけたんだぜ。邪魔するってんならそれなりの覚悟があるってんだろうなぁ?」
先に目をつけた、邪魔をするな、か……
だがこれが邪魔をせずにいられようか?
彼が傷つくのを黙って見ていると?出来るわけがない!
「覚悟?お主がそれを言うか。好奇心だけでジェミニを弄んだお主にそんな事を言う資格などない……!」
その行為が愛という感情を持っているのならここまで怒りを覚えることはなかったのかもしれない
勿論、元より許されない裏切り行為には他ならない
それでも、それでも……
「好奇心、ねぇ……心外だな。俺は俺なりに、アイツが欲しいと思ったんだが」
「その結果がアレだと言うのか!!」
傷つければ手に入れたと言えるのか
それを所有の証だと主張するのか
そんな事で手に入れて、勝ち誇るつもりなのか
言いたいことが溢れんばかりに浮かび、消えていく
ただ、一言だけ言えるのは、
「……お前は、愚かだ、スネーク……」
お前がそんな方法しか知らないのだとしたら、お前は愚かだ
「……お前に言われたくねぇよ、シャドー」
「そうだろうな……」
……本当は、奴を責める権利なぞ自分にはないのだ
自分も奴も、方向が違うだけで、同じ穴の狢に他ならないのだから
奴のようなことをしないという保証がどこにある?
(済まない……ジェミニ……)
こんな愚か者がお前を渇望して
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