白黒的絡繰機譚

プルートの話

腫れてる?そうでもない?そう、殴られた。……これで二度目。もうよぼよぼジジイのくせに、結構痛かった。ま、大事な忘れ形見貰ってくんだから、これくらいタダみたいなもんだけど。まあこんなのすぐ治るし。……俺なんか心配してる場合じゃないだろ。寝起き悪いにも程がない?
一度目?高校卒業してちょっと経った時。付き合わせてくださいというか、付き合ってますみたいなやつ。ばあちゃんの方には、結構前からバレてたみたいなんだけど、じいちゃんは全然気がついてなかったらしくて……「いつから孫をそんな目で見とった!?」ってもう、カンカンで。俺も正直に「最初から……」とか言ったからもう、火に油だったよ。姉ちゃんは爆笑してたけど……あっ。……いや、さあ?本人の前では、なるべく、気をつけてるんだけど……たまに、まだ、言っちゃうんだよな……。
背が、追い越せたら告白するんだって、やってきて……本当はもっと、伸びるつもりだったんだけど……。それでもなんとか追い越せたけどさ、なんだろ……やっぱ俺って年下のガキなんだろうなー!って思っちゃうんだよな。俺ばっかり足掻いて、必死になってる感じで。
てか本当はさ!もっと早く結婚したかったんだけど!ちゃんと就職して働いてる姿見せてないとじいちゃんが納得しねえって言われてさ……。やっぱり俺よりこう、視野が広い?っていうか。俺ってやっぱりガキなんだよなあってそこでも思ってさ。

「大人なんかじゃないさ。通り越してこの通り、女というより爺さね」
「……こんなジジイがいるわけねーじゃん」

真っ直ぐ綺麗な、美人でさ。モテるんじゃないの?って聞いたことあるけど、そんときも確か同じようなこと言われたっけ。
口調だけで判断してるんなら、どいつもこいつも見る目がないよ。……まあ、それが俺にとってはプラスだったんだろうけど。

「そう思っとるのはお前だけさ。……信じとらんな?」
「だって」

ずっと不安があった。どんだけ練習しても、勉強しても、何をしても追いつけない気がして、それでも男なんだから身長くらいは年月でどうにか出来ると思ったけど、それすらギリギリで。

「俺のどこがよかったの」

俺が選ぶ理由はあるけど、選ばれる理由はどこだったのか。アイツらの前では何でも自慢できるけど、あの人の、姉ちゃんの前じゃ何にも出来ない、それなのに。

「そりゃそのまーっすぐワシしか見えとらんとこさ。ワシのためにそんないい男になったんだろう?」
「……そう。うん、そうだよ。凄いだろ」
「ふふ、こんないい男、二度と捕まえられんからなあ。悪いがもう一度爺さんに殴られてくれ」

そう言われたら、さあ。
やっぱこれくらい安いどころじゃないんだよな。







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