ウラノスの話
……皆、どのような話をしていますか。成程、そういう。自分は皆のように、聞き手が楽しい話になるかどうか……。いえいえ、文章と喋りは全くの別物ですよ。片方のみが達者だというのも、よくある話です。自分の境遇のあらすじは聞いていますか?だろうと思っていました。あの方、結構口が軽いですからね。いえ、決して悪く思っているわけではなく、そういうところが美点だと思っています。
ともかくそれで、彼女とは距離を縮めることが出来たのは幸運だった。でなければきっと、二度と会うことすらなかったと思います。そもそも、彼女は出会ったことすら覚えてないと言っていましたし。当然ですが。別に特別な、印象に残るような出会いではなかったので。自分が一方的に、好印象を抱いただけで、彼女にとってそれは特別な行動ではなかった、それだけです。一人輪を離れている子供の横に座って、話をして、手を引いてくれた、それだけの。よほど良く調理しないと、プロットの時点で没を食らいそうですね。
プロポーズ、と呼ぶようなことは、してない……と自分は、思っていたのですが。どうも彼女が言うにはしたらしいんです。覚えてないんです。その……酔っていたので。
全然文章が書けなくて、つい気分転換にボトルを開けてしまって……。一人の時にやったのが良くなかったのでしょう。彼女は人が飲むのを止めるのが上手いんです。彼女本人は何故か延々と飲み続けるんですけど……。その、出来上がった自分を彼女が発見して。ああ、大抵自分が籠もりきりになる時は、料理を作りに来てくれるんです。
その辺りまではなんとか、覚えているんですが。その先が、全然。彼女に聞いたら、
「今までくれた手紙より凄いことを言った」
との事で……。いや、流石にそれは。いくら貴方でも、ちょっと教えられません。恋は盲目とはよく言いますが、実際そのような文面です。ですが流石に、酔っぱらいの戯言は無効なのでは、と言ったんですが。
「きっと素面でも同じようなことを言うと思うから、一度でいい」
そう言われると、まあそうだろうと自分も思います。仕事よりも熱心に言葉を選んで、彼女が毎度呆れるような文章をしたためてきた。それに、もう一度挑戦するならここから何年も待たせることになりそうなので、ごもっともだと。いくら自分と言えど、酔っぱらいの戯言よりひどい文章になりたくないですからね。
ただ、本当に……酒だけは控えようと、思います。これからは彼女が側にいてくれるので、恐らく頼る必要すらないのでしょうが。
この道に進んだきっかけも、スランプを脱するきっかけも、いつも与えてくれたのは彼女なのですからね