白黒的絡繰機譚

サターンの話

どう思います?……いや、聞いたところでどうにもならないのは分かってますけど。てか、ねえ。アンタも人が良い。普通だったらここまで世話焼かないですよ。まあ……多少は気持ちが分からなくもない……いややっぱり分からないな。理解して欲しくもないだろうけど。
まあ暇つぶしにはなるといいなと。あー、そう、そうなんです。あの人は言ったんですよ、俺に。

「そろそろ別れませんか」

って。まるで明日は燃えるゴミの日ですね、くらいの感じで。
……実のところ、あの人が俺にそういう事言うの、初めてじゃないです。まあ年1くらいでありましたよ。その度に嫌だと言ったら、そうですかで終わる、そんだけの話です。そりゃ最初の数回は滅茶苦茶狼狽えましたけど。まあ慣れたというか……これ言うと、マーキュリーやジュピターは嫌な顔するんですけど、まあアンタなら多分納得してもらえるかなと。
多分あの人は、自信がないんだろうなと俺は思ってるんです。そうそう、振られるくらいなら先に振ってやれみたいな。そっちの方がダメージ少なくて済むから、みたいなやつ。やっぱりアンタは分かるんですね。どう考えても、誰かに盗られるのは俺の方だと思うんですけどね、うん。
だから今回もそういう時期かーみたいな感じで、あんまり深く考えてなかったんですよ。やだよ別れないよって言ったんですけど、そうですかとは返ってこなくて。理由は?と聞いたんです。

「……。身軽になりたいな、と」

あんまりらしくない、変な理由だなと思いました。元々、人を手玉に取るような言い回しは好きみたいですけどもね、それにしてもと。
……ああ、そっすね。結局だいぶ質問攻めにして、似たようなことを聞き出しました。

「本当はもっと早く……私は、誰かとこんな、一緒に過ごす気なんて、なくて」
「もっと早く、いなくなるつもりだったの?」
「貴方はなんで私とまだ、定期を拾った時に見た、優しい子のイメージとは全然違う、碌でもない奴だって、もう十分理解したでしょう?」

泣きそうな顔で、そんなことを言って。ああ、だいぶ、酷いことをしちゃったんだなあって。
本当は独りで生きていく気だったんだろうなあって思います。それまでの境遇とかね、聞いてましたから。誰にも迷惑かけたくない、寄りかかりたくないってそう、思ってるんだろうなと。それと自信のなさとかそういうのが混ざって、多分。
でもそれって、お互い様っていう。俺だって釣り合ってる自信ないし、慣れたけど別れませんかは心臓に悪いし、碌でもない奴だってバレてる。
まあそんな感じで。真正面から言っても多分逃げちゃうんで、先にね?全部セッティングしとこうかと。
あの人はまだ、俺と自分を過小評価してるんですよ。出会いがマトモじゃない、自分がマトモに生きてきてない、だから何だってね!「別れませんか」とは言うけど「別れましょう」とは言わなかった理由に気がついてないんだから、可愛いなあってね。
サプライズは嫌いな子多いけど、あの人は実のところ、予想外が好きだと思いますよ。ああ、絶対そうです。
という訳で、これで事前準備はほぼ終了。後は当日、しっかり祝ってくださいね。







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