白黒的絡繰機譚

ネプチューンの話

先ず言っておきますが、マーキュリーが言っている親の会社と引き換えに……なんてことは事実ではないですよ。全て嘘だと言えないところが、宜しくないのだとは分かっていますが……。
あれは本当に偶然なんです。偶然の使い方が悪い?仰るとおりです……。
そもそも、当時の私は経営なんぞに関わってなんかないんですから、買収先の社長家族の情報なんて見れるわけないでしょう?父の口がちょっと軽かっただけです。先方にも同じくらいの娘さんがいる、と。勿論、それだけでああはならないですけれど。執念深いとか、怖いとかは彼らに言われましたね。
私が最初に彼女を見たのは、それより前なんですよ。中学の、サッカーか何かの予選だったと思います。学校単位で応援に駆り出されただけで、ちっとも興味がなかったんで、何のスポーツだったのか、どっちが勝ったか負けたかなんて、少しも覚えてないんです。ただ、隣の集団にいた彼女が、周りに合わせて少し背伸びするように応援して、得点が入ったら拍手してはにかんでいるのが……本当に、可愛らしくて。けれど他校の、名前も分からない個人なんて、また会える見込みもないのが普通です。だから、絶対に逃したくなかったんです。持てる手段を全部使った、狡い手段でも、ええ。
そんな手段を取った私を、彼女は好きだと言ってくれるんですよ。こんなに幸せなことはないです。長かったような、短かったような……本当は卒業と同時でも良かったんですけども、流石にそれはと両親に言われまして。私が止めたことを、まさかジュピターがやるとは思いませんでしたけどねえ。

「……。……本当に私でいいの」

正式に婚約をしましょう、と彼女に告げた時そう言われました。
彼女はいつも、私のことを困ったように見上げるんです。困らせている自覚はあります。最初も、その後もずっと。初めてのデートで、最初と同じく制服で来た彼女をショップに連れて行った時もそうでしたね。一式買って差し上げて、……ええ、彼女は値段を見て青くなってましたね。

「私はずっと貰うばかりで、何も出来ない。分かってるとは、思うけど……」
「そんなことはありません。貴方は、誰よりも素敵な人だ」
「大げさ……」

私は彼女の困ったような顔が、笑顔に変わっていくのが好きなんです。別にそれを見たくて困らせてるわけではないのですけれど。……疑ってますね?本当ですよ。

「一目で貴方を好きになって、それからずっと好きになり続けました。……今更さようならなんて、無理ですよ。お願いですから、捨てないでください」
「……仕方がない、なあ」

最後まで狡い言い方でしょう?
でも彼女を手に入れるためなら私は何だってするんですよ。これは幸福が勝手に落ちてくるようなおとぎ話じゃないんですからね。







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