白黒的絡繰機譚

マーキュリーの話

……この前の、ネプチューンのやつの帰りによ、アイツが「綺麗だったねえ」とか言うから「何だお前も着てみたいのかよ」って言った。返事を待たずに「着せてやってもいいけど?」っていつもみてぇに軽く、言ったと、思う。……別にそういうのは、考えてなかった。ウソ、考えちまうようになってた。
俺さあ、こうなるつもりはちっともなかったんだ。そもそも待ち合わせに突然やって来たアイツがヤベェだろ。別人のフリして約束取り付けて、どんな人がこんな手口でナンパするのか実際確かめたかったから、なんて理由聞いたことあるか?しかも俺を上から下まで見回して、じゃあ帰るねと来たもんだ。いやもう、マジでやべえ奴だろ。
それからどうしてこうなった、なんて聞きてえのは俺の方だっての……。だって、なあ?あんなガキンチョ……いや、なんか無駄に頭いいんだよなアイツ。ああ、そうだよ。だから志望校変えたんだよ……。うるせえ……あんな爆弾、一人で大学なんて通わせられるか。マジで、どうしてこうなったんだよ。
別にそういう……家庭が作りたいとか一般論みてぇなのは思ったことはねえよ。とにかく……アイツを野放しにできねえなって思っただけだ。他人同士の男と女なら、これが一番手っ取り早いだろ。……あー、確かにジュピターも同じようなこと言ってたな。ああ、そうだよ。不安なんだよ俺達は。あんな根無し草共、こっちでどうにかしとかねえと何処飛んでくか分かったもんじゃねえ。アイツ、ダチに言われるまで俺のことを彼氏じゃねえと思ってたしな。今思い出しても意味がわかんねえ。そんな意味わかんねえ生き物だろうと、まあ世の中には物好きもいるかもしれねえし……。何笑ってんだよ。
ああ、返事?待っても返ってこねえから、どうにか振り向いた。

「……。君が、ボクに?」

アホ面で見上げてきやがってよ。

「不満かよ」
「ううん?でも……予想外だなあ。君が、かあ」
「……お前さ、本当に俺を何だと思ってんだ?」
「遊び人」

……だから笑うんじゃねえよ。つか評価が高校の頃から変わってねえの何でだよ?!アイツと同時進行なんてしたことねぇぞ?!

「お前……」
「君はあんまり、タキシード似合わなさそうだよねえ。ボクも多分、ドレスは似合わないだろうけど」
「んな……」
「いいよ、やろう。何時にする?」
「……は?お前、意味分かって返事してるか?」
「むぅ、君こそボクを何だと思ってるの?」

意味不明な、謎の、ガキみてえな、少しも好みと掠らない、同い年とは思えない、そんな女。

「俺以外にゃ無理な女だよ、お前はさ」
「それはお互い様だにょ。ボク以外で君と籍入れてもいい子なんていないよ!」

ああ、全くそのとおり。
まさか一枚の紙切れがこうなるとはな!







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