白黒的絡繰機譚

ジュピターの話

……なんで喧嘩を売ったのか?ド直球に聞きますねアンタ。
普通になんかイラっときたんじゃないっすかね。いや、小学生男子がそれ以上のこと考えてると思います?ないっしょ。目立って痩せてはいたけれど、目立って可愛くも頭良くも、運動が出来た訳でもない、同じクラスでもない女子にそれだけで?ってツッコまれると何も言えねえけども。ただまあ、学年問わず男にも物怖じしないのは、ちょっと話にはなってたかな。
当時の俺は……怖いもの知らずだったと思いますよ。親は甘いし、周りに自慢できるものは何でも持ってたし、手に入れられた。テストも運動会もほぼ負け知らず。でも、アイツだけはそういうの全部どうでもいいと思ってたんじゃないですかね。ただ喧嘩売ってきて負けた、違うクラスのクソガキくらいにしか思われてなかった。負けたのもあるし、それ以上に俺をあまりにもどうでもよく思ってたのが、とにかく衝撃だった。多分そんなとこだと思いますよ。
それから、色んな行事にかこつけて誘ったり強請ったりしたけど、どれも全部躱されて。やー、ほら、俺結構モテるでしょ?自分で言うな?それはそうだけど。他に本命もいないのに俺にチョコくれなかったのアイツだけですよ。今?……渋々くれるようにはなりましたよ。ただ、これからはどうなるか……用意しろって言ってくれるダチが近くにいない訳だしなあ……。

「就職だ。決まってるだろ」

親は進学しろとうるさいけどな、と何時もみたいにアイツは笑ってた。ガキの頃から変わらずほっそいままで、結局あの卒業式以来、スカート姿も見なかった。

「さっさと独り立ちしたい。借金負ってまで勉強したいこともないし」
「……」
「お前は何処行くんだ?」

受ける予定の名前をいくつか挙げたけど、興味なさそうにふうんと返事されただけだった。別に大学の4年間だけ離れたって、今更どうこうならないのは十分わかってますけども、それでも俺がどうするかなんてことはアイツには関係ないんだろうなと。
アイツはいつもそういう風で。……別に、今更それくらいで冷めるとか、そういうのはないっすよ。なら最初から惚れるなって話で。ああ、はい、そうです。そこで、もう勢いで。……最初の卒業式とほぼ同じなんだよなあこれ。

「これ以上お前を野放しに出来るか。就職でも進学でも、どっちでも構わねえけど、その前に俺んとこに来い」
「……は?」
「結婚するぞ」

多分一生でこれ以上、アイツを驚かせることはないんじゃないっすかね。
アイツは暫くぽかんとした後、自分の稼ぎもないくせによくもまあ、とかブツブツ言ってましたけど、

「そんなに必死にならなくたって、お前以外に私を欲しがる男なんていないぞ」

って、少し鼻を赤くしてて。
必死で結構、そうじゃないと俺を見もしなかっただろうが!興味なかったくせに、結局俺から目は離さなかったし、離させなかった。最後にゃ俺の勝ち、でしょこれ。
……なんて、きっと俺は最初から、アイツに勝ちたかったわけじゃなく、隣にいて欲しかっただけなんでしょうけどね。







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