白黒的絡繰機譚

ストーンの話

私だな。うーん……彼氏……?まあ大体そうか、話すよ。
最初に出会ったのは、多分小学生くらい。親の会社のさ、レクリエーション的なので多分会ってる。私は殆ど覚えてないんだけど。そうそう、川辺で焼き肉するようなやつ。実際ちゃんと個人認識したのは、中学生になってからだな。
その中学の時にさ、その子の親が離婚になって、それがまあドロドロしたやつでさ。それでちょっと親から離した方がいいってことになって、会社の誰かちょっと頼めないかみたいなのにうちの親がそれに手を挙げてさ。いやほんと女子いる家なのに何考えてんだろうね。人が良いんだと思うんだけど、それにしてもさ、もうちょっと考えて欲しい。私もこの通り、女子っぽくはないけどもさ。
まあそんなこんなで、うちに期間限定で家族が増えた。年上だとは聞いてたけどさ……親父よりでかくてさあ。そう、私もその頃普通に160くらいあったけど……それでも見上げる感じだったし、時々ドアのとことか頭ぶつけてたからね、相当だよ。
最初はね、まあ大人しかったよ。そりゃ他人の家に厄介になってればさ。でっかいのに縮こまっちゃってる感じで、大変だなとは思ったけれどなんとも出来なくて。暫くはお互い余所余所しかったよ。
そこからどれくらい経ってからだったっけ……忘れたけど、ある日、親が両方ともいない日があってね。別に珍しいことじゃないけど。……まあ、この状況でそれはなあ、と思うよ。実際思った。とは言っても、警戒するってったってねえ、みたいな。
何であれ、邪険にするわけにもいかないしね。その日の朝、初めてマトモに口を利いたと思う。

「夜、何食べたい?」
「……」

あっちはなんか凄い驚いたみたいでさ、こっちを見下ろして変な顔してた。

「大したものは作れないけど」
「……いていいのか」
「? 何を今更……」

また驚いたような、呆れたような、そんな顔をされた。
確かにろくに会話もしたことないけれど、今まで散々一緒に飯を食ってきたわけだしなあ。親父が飯の時にかなり喋るし話しかけてくるから、あっちは今日何をして明日何があるのかとかそういうのはお互い知ってたな。親父は適当なことをするなとは思っていたけれど、本人に対して別に悪いことは思ってなかった。大変だな、とかそういうのばっかりで。

「……。何でもいい。何でも食べる」
「それが一番困る。ありきたりにカレーにでもしようか。でも、具はどうしようかな……」

分かれ道まで、そんな風に話をしてた。
結局買い物に行ったとこで考えよう、となってじゃあいってらっしゃい、と角を曲がろう、とした。

「君は」
「うん?」
「昔から優しいな」

何の話だろう、と思っている間にあっちは先に行ってしまった。昔からってなんだって思ったけど、多分最初に会った時のことなんだろう。全く覚えてないからな……。
まあとにかく、他人行儀がなくなっていったのはその日からだったな。夜、居間でテレビ一緒に見たり、ちょっとわからない宿題教えてもらったりとか。うん、なんだか兄貴が出来たような気がした。
それから暫くしてやっと泥沼離婚劇に決着がついて、あっちは結局転校することになった。親父は大げさに泣いたりしててちょっとうっとおしかったな。別に今生の別れってわけでもないのに。まああの人息子欲しかったらしいから、そういうのもあったんだろうけど。
え?いや別に、そこで告白とかはなかったよ。告白っぽいのは……その後手紙で来た。綺麗な字だったよ。うん、文通みたいな事になってる。あっちがさ、綺麗な字と高そうな便箋だから……最初凄い困ってさ。こっちは良し悪しも書き方もよくわからないし、家にあるのは親父の会社のロゴの入ったボールペンくらいだし。結局ペンに便箋と教本っぽいのまで買って、凄い待たせたと思う。あっちは気が気じゃなかっただろうな。
文面は……いや、無理。それだけは無理だな。でも、また貴方の作ったカレーが食べたいです、と書いてあったよ。
返事は、今度また親父の会社のレクリエーションがあるから……その時にしようと思ってる。料理係に混ぜてもらうつもり。ほら、ああいうのって大抵カレーも作るだろ?







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