ナパームの話
……。グラビティーもう電話は大丈夫なのか?そうか。では私も、夫の話をしようか。……?どうした皆変な顔をして。夫、別に間違えていない。……ほら、証拠のスクショだ。
また変な顔をして、本当にどうした?……リアルの話をしろ?だからしているだろう?
……。……ああ、皆誤解しているのだな。このゲーム内での夫も、リアルの将来的に夫になる男も、同一人物だ。浮気も何もしていない。するわけがない。
そう、ゲームでPTを組む内に親しくなりチャットを重ねているうちにアプデで結婚システムが導入されたのでやるしかあるまいと。勿論結婚によるお互いのメリットが大きかったのが一番の理由なのだが。限定アイテムはずるい。
そもそも、その頃夫は私が女だと知らなかった筈だ。ボイスチャットはしていなかったし、女性キャラの中身は男性の方が多いゲームだからな。私も特に言うつもりはなかった。流石に未成年女子だと露見すれば面倒なことなって最悪引退になるのは分かっていたからな。それでも……何事もノリと勢いと高難易度ボスには負ける。あまりに勝てなさすぎて連携を見直そうとボイスチャットをすることとなった。だが、私はこのような声なのでもしかしたらバレないのでは……と思ったのもある。最初は滞りなく、ボスも倒せたので万事問題なし……と思ったのだが、
「勘違いだったら申し訳ないのだが」
「はい」
「……女性ですか?」
突然最後敬語になったから笑った。笑い事ではないが。
皆からしたら意味不明だと思うが、ゲーム内とはいえかなり長く共にしてきたので、情があったのだと思う。私は知っての通りこのようなたちなので、皆以外に友人もいない。ある意味初めての異性の友人になるのかもしれない……と思ったら、嘘はつけなかった。
その後はもう坂を転がるが如くとでも言うか……。リアルでも会ってみよう、になるまで時間はかからなかったな。年齢が変わらないのも大きかったとは思う。お互い相手は自分と違って成人だと思っていたがな。ただ……あちらの言動からどうも私を随分と美化しているのではないか?という気配はあった。リアルの私はこのように、男女問わず遠巻きにされる変なオタクだ。十中八九幻滅されるだろうと思った。それでもまあいいか、結婚解消も可能になったことだし再婚は課金のみだから無理だがなどと思って当日だ。
別にめかしこみもせず、近所に出るのと同じような格好で待ち合わせ場所に向かうと、ゲーム内のアバターに雰囲気が似た夫がいた。私と違ってあまりイメージの剥離がないのも凄いなと思った。どんなアバターか?そうだな……重戦車系?背が高くて体格もいい、リアルでも戦えそうだな……という感じだ。
その日はそれ以上特筆すべきこともなく。異性の友人とはこういうものか、体験できて良かったと思った。
私が驚いたのは数日後、もうないだろうと思っていたボイスチャットに誘われて、また是非会いたいと言われたことだ。
「何故?」
「……。理由は、会って言いたい」
「それまた、何故」
「誠実ではないと思うからだ」
……うん、皆は鋭いな。私は当時何にも分からなかった。
けれど二度目、最初告げられたゲーム内とは違う、ちゃんとした愛の告白と言うべきものに、ああ私には夫が唯一無二なのだと思ったのは、本当のことだ。