ウェーブの話
ジャイロの後とか話しにくいんだけど……。てかみんなの目がなんかこう……怖いというか……。いや、私の言い方が多分マズかったんだけど、別にみんなの思ってるような感じじゃないよ?!
……わ、わかった、最初から言う。ええと……うちは倒産寸前レベルの貧乏なのはみんな知ってるよね……。高校上がれるかも微妙だった時期もあって……。そのギリギリくらいの時に、大きいとこから子会社化の話が出て……で、そこの子供が、私と是非に、みたいな?……うん、完全にここだけだとマズいやつ……。でも、なんていうか……あっちの会社の人の方が凄い、低姿勢だったんだよね。こういうのって、あっちの方が有利なんじゃないのかな。うちは本当にそれを飲むしか道がなかったし。なのにどうか一度会うだけでも……!って凄い頭下げててさ。それでうちの親も困って、私に一回だけ会ってあげて、って。
……ああ、うん、そうだよね。思うつぼって感じはした……。でも、契約書……誓約書?みたいな?私にはよく分からなかったけど……絶対に何もしませんそちらが不快に感じたら幾らとか、そういうのまで出してきてて?会う場所も料亭とかホテルとか……密室じゃなくて、ほら、駅のさ、コーヒーの……そう、あそこ。人多いし、駅ナカだから車乗り付けとかないし……。じゃあ流石になんにもないかなって……。危機感薄い?まあ……だからうち貧乏なんだと思うよ……。
それでもさ、当日は親子揃ってガチガチに緊張してたよ。どんな服着ていけば良いのかわからないし、いいのないから、結局制服だったしさ。駅まで送ってもらって、中入ったら、言われてた奥の席にもう誰かいた。ここで本当に合ってるよな……って近づいたらさ、いきなり立ち上がって、
「ウェーブさん、来てくださったんですね!」
って、顔真っ赤にしてて。周りの人が一斉にこっち見るから恥ずかしかった……。
立ってるのもアレだから、とりあえず座ってさ、どうしようかなこれ……って。
印象?思ったより普通の同年代だな……?みたいな……?ああ、そう、言ってなかった?別に一回り以上年上のオッサンとかじゃないよ。あー……だからみんなかわいそうかわいそうって言ってたのか……。
確かに服から何から、色々買ってもらってはいるけど……。別に私が強請ったことなんて一度もないんだよね。あっちが楽しいみたい。うん、確かに小金持ちのオッサンムーブだよねえこれ。傍から見てたら勘違いもするよね。
それで、ええと……、
「このような形で貴方と向き合うのは、良いことではないと……分かっていたのですが……」
自覚はあるんだなーとかもう他人事みたいに考えてた。現実味なさすぎるとなんか冷静になるよね。
「そうでもしないと、貴方とこの先接点を持てなさそうで」
「それはまあ……そうでしょうね?」
御曹司と貧乏だからね。そりゃそうとしか。
きっとこの人は進学校に行っていい大学入って会社継ぐような人生で、私は中卒か高卒かでひたすら働いてたら終わっちゃうような人生になるんだろうし。こんな至近距離になるなんて、今だけだろうと思った。
「貴方は私の事を知らないだろうし、知りたくもないのかもしれない。けど……」
というか、そもそも男の人とこんな至近距離で目を合わせたこともないよなあって。緊張してたし、よくわからなくなってたところは凄いあるんだけど、別に嫌じゃ、なかったんだよ。
「貴方が好きなんです。一目見て、貴方を。……狡いやり方をしたけれど、お願いです」
……。もうよくない?恥ずかしくなってきた……。
外泊届は、ホント泊まるだけだよ?別々に寝てるし……。なんにも無いったら!正式に婚約もしてないのに出来ないって言うんだよあっちが!!…………あっ。