白黒的絡繰機譚

Yシャツ上の白雲は

※18禁描写有り※

「あれ、めっずらしいの」

季節感なんてくそくらえ、とでも言うように決まりきった服装と低露出の俺様専属秘書、どうしたんだか今日の服装は何時ものハイネックじゃなくてワイシャツだ。これまたボタンを綺麗に上まで閉めて、全く苦しくないのかねありゃ。俺だったら最低でも第二ボタンまでは開けちゃうね。

「前から言っていたでしょう。今日は……」
「スポンサーへの媚売りパーティ、分かってるって」
「そのような言い方はどうかと」
「でもそうじゃん?」
「……」

諦めた様に肩を竦ませて「17:00に車を手配していますから」とだけ言って踵を返す左手を掴む。因みにここは半年契約で借りたマンションのベッドルーム。最初はホテルで良いか、と思ってたんだが、スポンサー繋がりの奴からこの物件の情報を聞いて、二つ返事で決めてしまった。「また勝手に決めて」とアンドリューには怒られたが、まあ今更だし。本当ならこのキングサイズのベッドは一人寝用じゃねぇってのに、アイツは勝手にゲストルームをぶんどった。「俺は一人の方が快適に寝れるんです」なんて、まるで俺が鼾や歯ぎしりなんかするみてぇじゃん?

「てか、何、どこ行くの」

ぐいぐいと腕を引いても抵抗するので、腰を抱いて思いっきり引いてやった。ぼすん、といい感じに俺の腕の中に収まったから、苦しそうなボタンをぷちぷち外してやる。あーあー、いっつも思うけど青白いの。

「俺は昼から打ち合わせが」
「はぁ?何で」
「分かっている事をわざわざ聞くの、止めてもらえます?」
「それを聞くのが楽しいんじゃん?」
「知りません」

つまりこのワイシャツは、こっちに帰る時間がないから最初からフォーマルで、と言う訳だ。スポンサーに依頼でもすればいくらでもスーツが選び放題の俺と違って、コイツは流石に自前になる。まあその自前も、俺が選んでやった上等なんだけどな。だってコイツ!ちっとも拘りってものがない。そりゃずっとそういうの二の次三の次で生きてきた事は知ってるが、それにしたってもうちょっと何とかなるだろうって思うレベルだ。

「で、それは分かったけど、にしても身支度早くねぇ?」

服を脱がせながら、俺もブランド指定してやろうかな、とちょっと思いはしたけれど、あのオーナーさんと同じ事をするのは嫌だったし、そもそも俺の個人スポンサーであるブランドの服はイマイチ似合わない。なので、そのまま味もそっけもない服装でほったらかしている。まあでも、黒い服の袖や襟から青白いコイツの肌が覗くのは悪くないけど。

「昼から打ち合わせ、分かるでしょう」
「ああ、そうね。うん」
「……俺の言いたい事を分かっているでしょう?」

ぎりり、と睨みつけてくる視線に肩を竦めて、でも解放はしない。だってそれじゃあつまらない。えらく早く身支度してる理由も本当は知ってるし。今回のパーティ会場の一区画向こうにある爺さんがマスターの喫茶店。あそこで一人ランチを食おうと計画してるのはお見通しだ。
やっと食事ってものに興味持ってくれたのはまあ嬉しいんだけど、俺様に黙ってってのはいただけねぇ。

「だから何?」
「止めてください」
「ホントに?」

ボトムに手をかけながら、そんな事を聞く。ぎり、と睨みつけてくるゴールドは、もう頼りなくなってきてる。
コイツをこうしたのは俺。他の誰でもないこの俺。初心なコイツに、手とり足とり全部仕込んで、堅物モードからすぐ切り替わるように教育したのは俺。低い体温が俺の手で上昇するように、脇腹を撫でれば反応するように。
腕の中から解放して、シーツに押し倒す。全部ボタンを外したから、全部が俺の目に映る。

「んー、いい眺め」
「……っ」

白いシーツ白いワイシャツそして白い肌。
壁の殆どを占める大きな窓は、青天の太陽光を侵入させて、白を余計際立たせる。月明かりも勿論いいんだが、俺はどっちかっていうとこっちの方が好きだ。

「な、打ち合わせなんていいだろ。アンタが言うように俺は分かってるし」
「だ、めです」

首、鎖骨、胸、臍。ゆっくり舌を這わせれば、じくじくした熱がお互いの身体に広がっていく。

「なんで?形だけの打ち合わせ、俺がちょっと早く行けば要らないようなのじゃん」
「でも俺の、仕事……っ」

本当はこんな前戯吹っ飛ばして、さっさとアンタの中に入れたい。この白い肌を俺が赤く染めてやりたい。

「アンタの仕事はさ」

早く、はやく、はやく。
光を反射するシルバー、ゴールド、ホワイト。アンタのパーツが全部、俺を欲しがってる。口以外は全部そう訴えてる。
だから、早くしてやらないと。

「俺様を満足させること、だろ」
「……貴方って、最低だと、思います」

本当はサイコーだって思ってるの、知ってるぜ?







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