助け人は、来ず
朝特有の気だるさを感じつつ、俺は学校の門を今日もくぐる。……因みに、今は授業中(終了5分前だが)だ。
別に寝坊したわけじゃない、ただ嫌な予感がしただけだ(待ち伏せとかな!)
「盾ー、遅いぞー」
この無駄に明るくなれなれしい声を聞いた瞬間、俺の気だるさは一気に増した。
「……アンタ、なんでいるんだよ」
わざわざ遅刻してまで会いたくなかった奴が目の前にいた。
とっさに右手で首筋を隠す。
「あ、コラ、隠すなって盾……って、あー!!」
「…………」
鋼野が無理やり剥がした俺の手の下にあったのは一枚の絆創膏。
……キスマーク丸出しで学校来れるわけねーじゃん。
「盾、俺隠すなって言っただろー?」
「んなこと守ると思ってんのか!!とりあえずそれ返せ!予備ねーんだから!」
俺が叫んだその時、授業終了のチャイムが鳴った。
……ヤバい、早く鋼野を振り切ってしまわないと誰かに見られたら……!
「……あれ、部長……と先生?」
「ま、まどう、いち……」
……って速攻見られたよ!しかも知り合いに!
「何してるんですか? ……って、部長、首……?!」
うわ……何でしっかり見つけるんだよ。
確かに結構しっかり残ってたけどさ……。
「魔導市……これは、その……」
無駄な足掻きかもしんないけどとりあえず言い訳させてくれ……!
と、思った俺が魔導市に言い訳するために近づいたその時だった。
「う、わ……!!」
鋼野がいきなり、俺を引き寄せて、その……抱きしめた。
「てめ……!!放せ!!」
俺はもがくが、腕は一向に緩くならない。
そして俺を抱きしめたまま、鋼野は魔導市に言った。
「盾は、俺のだから。手ェ出したら……分かってんな?」
一瞬、鋼野が何言ったのか分からなかった。
「…………は?! ま、魔導市、違うからな?! 信じるなよ?!」
見ると、ポカンとした顔をした魔導市に俺は必死に言った。
「何だよ盾、照れんなって」
「違うわボケェー!!」
「……先生」
やっと口を開いた魔導市の声は、いつもより少し低かった。
「ん?」
「……僕に脅しはききませんよ?障害があるほど燃える性質なんで」
「…………は?え、あ、え?」
なんか急展開過ぎて着いていけないんですけど?
あれ?俺の周りってこんなのばっかり?マジで?
おいてけぼりの俺を余所に、鋼野と魔導市の間にはしっかり火花が飛んでいた。
……今日という日は始まったばかりで、終わりはまだ先のこと。
つまり、俺はまだ安息を手に入れることができない、残念ながらそういうことだ。
更には頭痛の種まで倍増。
誰か教えて。俺、何か悪いことした?