まわってまわって
ヴィルギルがライアンの秘書やってる未来IFかつ、ご都合NEXTで若ライアンが出現するネタ。
テレビジョンという媒体において活躍するNEXTは、ヒーローだけではない。
例えばそう、今ライアンの横で司会者の紹介を受けながら、にこやかに笑っているタキシードの男も、その一人だ。
色々な国で興行をしているというその男の能力は、なんともまあ変わった能力だった。その気になれば何か詐欺にでも使えそうな能力を、こうやってショウビジネスに出来たのは、彼に適性があったからなのだろう。
「――それでは、さっそく見せていただきましょう! さあ、ライアン、手を」
「はーいよ」
司会者に促されるままに右手を差し出す。ライアンの右手を覆うように握ると、男の身体が発光する。くらり、と意識が一瞬遠のき、瞼が自然に落ちる。それを開けたら、このどうでも良いショウの撮影も終わるだろう、とライアンは思った。
「……の筈だったんだが」
溜息を吐いて、ライアンは目の前を見る。宛がわれた控室のテーブルにあった椅子は4脚。収録前に使われていたのは、自分と秘書兼恋人のアンドリューの座る二脚だけだ。それが収録が終わった今は、3脚が使用中だ。増えた原因は何かと言うと、アンドリューの横にいる。
「なあ、さっきまでぐちぐち言ってたくせに、なに腕なんか組んでんだ」
「そりゃ面白いからに決まってんじゃん」
にひ、とアンドリューの腕に抱きつきながら笑ったのは、やや長めのブロンドをヘアバンドで留めた少年。癖のある顔立ちは、ライアンによく似ている。
――それもそのはず、彼はおよそ10年前のライアン・ゴールドスミス本人なのだから。
本日ライアンがゲストとして招かれたのは「びっくりNEXT大集合」……という安直にも程があるバラエティ番組だった。
「触れた人間の過去の姿を一時間だけ実体化する」というNEXTの男が、タレント達の若い姿を実体化していく中、勿論ライアンもその能力を受け、過去のヒーローとしてまだ新人だった自分の姿が実体化した。収録はつつがなく終了したが、問題はその後だった。
他のゲストタレント達の過去の姿と違って、ライアンのものだけが一時間経っても消えなかった。
慌てるスタッフ達だったが、本人達は何とも気楽なもので「そのうち消えんだろ」「じゃ、消えるまでヨロシク頼むわ、俺」とマイペースだ。
「何が面白いんだよ」
「だって、よくよく考えたらすげーなって思ってさ」
レオン――呼び分けをどうするか、と尋ねたアンドリューにからっと「じゃあ俺の事はレオンって呼んで」と言った――は、未来の自分の秘書だと言ったアンドリューを最初、酷く嫌がった。曰く「俺の癖に趣味が悪い」「男なんてありえない」だそうだ。
ライアンはその言葉に苛立ったが、アンドリューは最もだと思った。ライアンはセレブ生まれのヒーローだ。身体能力も頭脳も生半可な者では太刀打ちできない。彼の隣を狙う女性は多く、元々ライアン自身も結構な女好きである。
それなのに、とアンドリューは目の前でぶすっとした表情を隠しもしないライアンを見つめる。よりにもよって自分――男で、年上で、前科もちのとんでもない不良物件だ――のような者に引っ掛かるだなんて、まだ若いレオンからすれば想像できるはずもない。
「俺がもうモテモテなのはよーく分かってるけどさ、そうだからぶっちゃけ告られるけど告った事ない……みたいなさ、あったじゃん」
「まーそうだけど」
「なのにあと10年くらいしたらこんなになるんだ!って思って」
「意味が分からねぇ」
ぶすくれたままテーブルに上半身を投げ出したライアンを指差しながら、レオンがアンドリューの袖を引っ張る。
「な、俺ってば全然分かんねぇって顔してる。俺の方がこの時代の俺より大人だな?」
「……そうかもしれませんね」
「アンディ!」
「ライアン、貴方今自分がどういう状態か分かっています?」
「何、お前ら何が言いてぇんだよ」
最初、そう見えたのをアンドリューは自分の贔屓目だと思った。が、レオンがおかしそうに笑いっぱなしな所を見ると、間違っていないのだろう。
「貴方、レオンに俺が取られるかも、取られたくないって凄く怖い顔してます」
目の前の自分が呆けた顔をしたので、レオンはもうたまらずアンドリューを抱きしめて笑った。