まわってまわって:2回転目
ヴィルギルがライアンの秘書やってる未来IFかつ、ご都合NEXTで若ライアンが出現するネタその2。
司法局への届けやら、これからについての面倒な報告等を終え、ライアン達が現在の住居を構えているマンションのエントランスまで戻ったのは、とっぷり日が暮れてからになっていた。
エレベーターに乗り込み、最上階へ向かうボタンを押す。
「ったく、いちいち大事にしすぎだっての」
「そーそー。別に俺がいようと困る事なんてないと思うけど」
「貴方達は軽く考えすぎだと思います」
そもそも、事の発端となった興行師の男の能力からして特殊すぎるのだ。
「過去の姿を実体化する」……本当に過去の時間軸から引っ張ってくるわけではなく、あくまでコピーであり、最悪実体化された過去の人物が死亡しようとも、現在には影響が及ばない――男はそれを『自分で』試した事があると話していた――そうだ。彼がその能力で犯罪等に巻き込まれず生きてこれたのは、ある意味奇跡なのではとアンドリューは思った。
そんなとんでもない能力が起こしたイレギュラーが、穏便に済むと予測するのはあまりにも楽観的過ぎる。各方面が慎重になるのも致し方がないだろう。
「アンディはホント、なんでも真面目に考えるんだから」
でもそこが可愛いよなぁ、と言って何時ものように――アンドリューは是非とも控えて欲しいと思っている――こめかみに唇を落とそうとしたので、アンドリューはその隙間に掌を差し込んだ。
「ちょ、何」
「レオンの前です」
「俺だろ?別に気にすんなって」
「気にします。貴方も流石に嫌でしょう、レオン」
アンドリューが斜め前に立つレオンに同意を求める。既にアンドリューよりも高い位置にあるライムグリーンの瞳が振り返り、少し思案してから口を開いた。
「いや、別に?」
「……だってよ。ほらアンディ、ちゅー」
「止めてください。ですが、レオン、その……」
アンドリューが言葉尻を濁している間に、エレベーターは最上階へと到着する。扉が開けば進むしかなく、そのまま変な沈黙が三人の間を流れた。暗証番号と指紋認証で解除された玄関をくぐれば、やっと我が家だ。
「――あー、ハニー機嫌悪くしてねぇかなぁ」
「ハニー?」
「ペットだよ。あとで見に来いよお前も」
「ん」
2人を置いて、ライアンはペットであるグリーンイグアナの元に向かう。
「……なんていうかさ」
「レオン?」
レオンはアンドリューのすぐ後ろを歩き、辿りついたリビングのソファへその身体を投げ出した。その動きはライアンとそっくりで、アンドリューの口角が少し緩んだ。
「俺は確かにライアンだけど、でもアンタのライアンとはまた多分、違うんだよ。過去とかそういうの抜きにして」
「……」
「何だろうなぁ、兄弟とかそういう感じかも。だから別に、俺はアンタと未来の俺がキスしてようと嫌悪とかはしないかなぁ……うん……なんか、その……」
もごもご、とレオンが言いあぐねたまま床に落ちていたクッションを拾って、それに顔を埋める。その様子がじんわりとアンドリューの中に一つの感情を湧き上がらせる。
「レオン」
「……何」
「ありがとうございます」
クッションの隙間から手を差し入れて、未来と変わらないふんわりとした髪の毛を撫でる。
これは紛れもなく、ライアンに思うものとはまた違う愛おしさなのだろうなとアンドリューは思った。