悪いのは、悪くないのは、悪いのは、悪くないのは……








子供の事情、大人の事情








嬉しい、と思う
でも、嬉しくない、とも思う


「……どうしました。美味しくないですか」


「別に……いつも通りだし……」


「それなら良いですが……クラウン、何かありましたか」


『何かありましたか』?
オマエに言われたくないんだケド


「べっつに」


「…………」


……ム、何だよその顔……っていっても、そんな変わる顔してないケド
なんていうか、雰囲気が、そんな感じ
まるでクラウンマン様がオマエを困らせてるみたいじゃん
ムカつく


「おかわり、いりますか」


「……いらない」


こういうのなんて言うんだっけ、ぶっきらぼう?
そんな感じになってる、ってことくらい分かってるぞ、クラウンマン様は馬鹿じゃない
けど、だからってどうにかできる訳じゃないんだ、仕方ないだろ?


「…………」


今は、おやつの時間
ココアと、クッキー
正直クッキーはちょっと飽きた


「……おや、もう良いんですか」


「もういい」


お腹いっぱいじゃないけど、食べづらい
だから、もういらない
……別に、どっか行きたい訳じゃないし、行ってほしいわけでもない、けど


「クラウン」


名前を呼ばれても、返事なんかしたくない
そんな気分じゃない
……嬉しくない訳じゃ、ないけど
とりあえず……イタタマレナイ?なんかそんな感じ
おもちゃで遊んだら、多分治る……と思うから
今日はここでアンタとはサヨナラ、さっさと答えを出せよバーカ








「……駄目ですね、私は」


目の前の誰もいない椅子
さっきまでは、クラウンがいた
居心地が悪そうなその子に、求める様な言葉一つかけてやる事が出来なかった
出てくる声も何時も以上に『機械的』で、私の方こそ随分居心地が悪かった
原因は私の癖に、何を考えているのだか


「…………」


皿の上にまだたくさん残っているのは、あの子の好きなクッキー
様々な形に型抜きされたそれの、どの形が一番のお気に入りなのか私は知っている
……こんな時でも、そのお気に入りは一つも残っていない
あの子らしすぎて、少しだけ笑みがこぼれる


(私には、多分あの子が必要なのでしょう)


それは分かっている
けれど、その理由の名前が見つからない
そんな中途半端な状態にも関わらず、普段と同じように接しようとする
何故か?必要だから


(多分、もう少し……だとは思う、けれど)


理由の名前が、あの子の願いと違う時、私は一体どうするべきなのだろう
それが怖くて、答えを見つけたいけれど見つけたくない


「……中途半端は、身を滅ぼすというのに」


あの子に出来た事が、私には何一つ出来ない
駄目だ大人だ、私は


(ああ、でもやはり)


私は、あの子を失いたくない





タネは消え果て迷宮へ<<