白黒的絡繰機譚

眠気を払う3桁の重さ

「……何してやがる」

腹の辺りに変な重さを感じて、開けたくないが目を開けた。
……そうしたら、見えたのは出来れば見たくないモンだった。

「え?うーん……夜這?」
「死ね」

身体を回転させて振り落とそうとしたが、ガッチリくっついて離れやしねぇ。
だから磁石ってのは嫌なんだよ。

「ヤダよ、死なないよ。そりゃさー、同意なしは悪かったと思ってるけど……って嘘、嘘だから!手引っ込めて!」

同意なしとかそういう問題じゃねぇだろうが。
この前からホント、コイツは碌なことをしねぇ。いっそ吹き飛ばしてやろうかとも思ったが……ああ、それすら面倒くせぇ。

「とりあえず、降りろ。そして帰れ。出来ないなら死ね」
「えー……」

とりあえず腹からは降りた。つか降ろした。
だが、ベッドの横から動こうとしねぇ。

「……帰れ。俺は寝たいんだよ」
「別に俺がいても寝れるでしょ?」

……そうきたか。
が、お前が横にいて寝れる訳ねーだろうが。
自分が今まで何しようとしてたのか忘れてんのかこのアホは。
四六時中出来うる限り、ってくらい付きまとって、話しかけてきて、触ってくる。他の奴らも眉ひそめて引いてたってのに、少しも怯んだ様子すらなく、繰り返してきやがった。
……ああ、追い出す方法を考えるのも面倒くせぇ。

「……ちょっと待て。何普通に入ってきてんだ」

そんな事を思いながらちょっと目を逸らした隙に、布団の中に腕が侵入してくる。

「駄目?」
「駄目も何もあるかアホ」

野郎が小首傾げて言っても可愛くないっての。

「今度は何もしないってー。ね、絶対に何もしないって約束するからさ。一緒に寝ようよ」

こんなに信用出来ない台詞も中々ないんじゃないだろうか。それくらい信用する気にならない。
大体、

「……野郎同士で何で一緒に寝る必要があるんだよ、気持ち悪ィ」

そんな必要性がどこにあるんだよ。どこにもないよな?あってたまるか。

「そう?んー……まぁ、普通はそうだよねぇ」
「おま……だから入ってくんな!」

さっきから拒絶してるにもかかわらず、コイツは諦めない。
それどころか、楽しそうに笑ってさえいる。意味が分からない。
……そして、

「でもさー、俺はハードが好きだからね。好きだから一緒に寝たりしたいの。ね?」

そう言うと、俺の返答も待たず布団に滑り込み、身を寄せてきた。

「おま……ああ、くそっ!」

さっきよりも強力にくっつきやがって、びくともしない。
あー……、くそ。潰れても知らねーからな。どうせコイツの事だ、朝になったら何かと喚くんだ。自業自得だっての。

「おやすみ、ハード」
「……ったく」

恐ろしい程の早さで眠りについたコイツを潰さずないように寝るには一体どの体勢で寝りゃあ良いのやら。
ああ、俺は早く寝たいだけだってのに、なんでこうも……コイツのペースに乗せられちまってるんだ?







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