ああああ、誰か誰か!
誰でも良いから俺を助けて!








サイコロ落ちた








そんなつもり、無かった
これっぽっちも、無かった
それなのにそれなのに!


「…………」


「…………」


声が出せない
何言って良いかも分かんない


「えーと、ですね。クラウン、さっきのは一体どういう……」


「……ち、違う違う!俺は、だから、その」


言いたかった訳じゃない
でも言いたくなかった訳でもない
分かんない、俺が俺の事


「ちょっと、大丈夫ですか?少し落ち着いて……」


止め、止めろ止めろ
今は触られたくなんかない
どうかどうか、俺を


「クラウン!待ちなさい!」


どうか俺を一人にして!!








「………………」


……追ってこない
追って来て欲しくなんかないから、イイケド


「……ばーか」


誰が?
決まってる、アイツしかないじゃんか
だってさ、だって……だって……


「……ばか」


……分かってる、本当にバカなのは誰なのか
でも、認めてなんかやらない
そんなの俺様らしくないし、なんか負けたみたいじゃん?


「……ばか、ま、マジックマンの馬鹿……!」


言うつもりなんか、無かった
これっぽっちも、無かった
俺はコドモなんだろうけど、分かってたから
マジックマンは俺のコト、嫌いじゃない
トクベツだって言ってくれた
でも、俺の本当に欲しいモノ、分かってくれてない
だから、言うつもりなんか、無かったのに……


「ばか、ばか、ばか……!!マジックマンの、馬鹿!!」


頭の中がぐしゃぐしゃして、よく分かんない
ニンゲンみたいに泣けたら楽になれたかな……








「ええ、私はどうやらかなりの馬鹿の様ですね」








声に、振り向いたら、いた


「な、なんで……なんでいるんだよ!馬鹿!!」


来なくて良かったのに
来て欲しく……無かったのに


「何で、と言われましても……貴方をほっておくことなんて出来る訳ないでしょう?」


あんなコト言われても、かよ


「ほっておけばいいだろ!俺なんか……俺なんか……!」


「クラウン」


「……!!」


ぐいっと近寄られて、顔が近くにあって
同じ高さにある目に、俺だけが映ってる


「まずは貴方に謝るべきでしょう……済みませんでした。私は貴方をずっと苦しめてきたみたいです。この前、貴方に『特別にしろ』と言われた時点で気がつくべきだったのでしょう。 でも私は気がつけなかった。誰よりも貴方の近くにいた自負があるというのに、貴方の気持ちに無頓着だった……情けないですね。貴方の言う通り、いやそれ以上の大馬鹿者ですよ」


「…………」


「……正直に言いましょう。クラウン、貴方が特別なのは事実です。でも、それは貴方が先ほど言った言葉とは種類が違う」


「……知ってる」


今、ガキンチョにみたいに大声で泣けたらどんなに良いんだろう
身体の中にドンドン湧いてくる嫌な気持ちを、外に出せたらどんなに良いんだろう


「けれど……本当にそうなんでしょうか?私が気がついていないだけで、この二つは何も変わらないのかもしれません。クラウン、貴方は私に心からの言葉をくれた。だから、私も半端な返事をしたくないのですよ。だから……時間をくれませんか」


「時間……?」






「そう、時間です。どうか私に、貴方へ心からの返事をする為の時間をくれませんか?」






そう言ってきたマジックマンの目は、手品をしてる時よりも真剣で
それに見つめられたら、ちょっとだけど嫌な気持ちが減っていった


「……クラウンマン様は、優しいから、待ってやるよ」


「ありがとうございます……クラウン、本当に済みませんでした」


「……謝るくらいなら」


両手をつき出す
……これくらい、分かるだろ?


「……はい、了解しました」








今だけは、コドモみたいにぎゅっと抱きしめて





>>タネは消え果て迷宮へ