それを、望むのならば








吐露








「ジェミニ……大丈夫か?」


「ああ……」


返事を返してきたものの、どう見ても大丈夫そうには見えない
……ああ、もっと早く助け出せていれば、最初を防げていれば
後悔は後を絶たない


「一先ず……あやつはあと半時は動けまい。その後またやってくるやもしれないが……拙者が……守ろう」


口からこぼれた言葉に、驚いたのは己自身
そんな大層な事が出来るだろうか?


「シャドー……いや、気持ちだけで十分だ」


「しかし……」


不安なのだ
お前がこれ以上あやつの毒に晒される事が
お前がそんな顔をし続ける事が

己が、冷静でいられるかどうか


「俺は、大丈夫だ。守られたりするのは俺らしくないだろう?」


笑った顔が痛々しく見えたのは気の所為か?
お前がそのような顔をするたびに、拙者の方が痛みを感じてしまう


「だが……拙者は……」


口から零れそうになる言葉を押し込める
それを言ってどうなる?
これ以上、お前を困らせてどうするというのだ?
ただの自己満足にもならない、最低な台詞にしかならないというのに


「シャドー」


少しゆっくりとした口調で、静かに呼ばれる己の名


「……ジェミニ」


「お前の気持ちはとても嬉しい。けど、俺は俺が守られる様な事はらしくないと思う……おかしいか?こんな目に遭っておいて、滑稽だろう?」


「…………」


「アイツは……スネークは許せない。けど、悪いのはアイツだけじゃない。俺が勝手に……見た目だけで遠ざけて、気がついたらこの様だ」


「ジェミニ……」


「アイツとは、正面から向き合う必要があると思う。けど……」


それまで僅かに微笑んでいた表情が、曇る
……そうさせるのは、あの男


「……怖い。怖いんだ。けど、だからといってそれじゃ済まないだろう?」


怖いと言って、逃げるのは簡単だ
逃げるのならば、手伝う気もあった
例えそれが、何かを捨てる事になろうとも、望むのならば、それで良いと思っていた
けれど、それは解決にならない
考えれば当たり前だというのに……ああ、やはり己は浅い


「ならば……共に行こう」


「シャドー、気持ちは嬉しいがこれは俺の……」


「分かっている。これは拙者のただの我儘だ。ジェミニ、頼む」


そう、これは己の自己満足であり、ただの我儘


「…………」


少し伏せられた顔は、周りの暗さとも相まって、表情が見えない


「……本当は」


上げられた顔は、人間ならば涙の光る表情をしていた




「一人じゃあ、竦んで動けない」




……ならば、するべき事は一つ








「拙者が、手を引こう」








「……ああ、頼む」


差し出された手を握って、いざや行かん








お前にまた、笑顔が戻る事を祈って





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