だから嫌なんです(ファラオ→クリスタル+ジャイロ)
一応は、(ファラオ→クリスタル)
偶になら良いでしょう(スター→クリスタル)
リコレオ(ファラオ→クリスタル+ジャイロ) ※
『逃げる月』
直後となっています
「……おや、インターフォン鳴ってますよ。ジャイロ、出てきてください」
「あー……無理。たまにはお前が出ろ」
「……このままですか?」
「メットくらい無くてもいいだろうが。見られたくないのはスターにだけだろ?」
「まぁそうですけど……。仕方がないですね」
「つか否定しろよ……」
「……お待たせしました。スイマセンね」
「まったく我を待たせるとは……。大体、博士の頼みでなければ我がこんな、使い走りのようなことを……。こういうことはリングにでもやらせておけば良いのだ……」
「聞いてらっしゃいますか?」
「……ああ、済まない。しかし客人を待たせるなど……?!」
「スイマセンでした。なにせ今日は人が少なく……ってなんですか馴れ馴れしいですね。手を放してくださいませんか?」
「美しい……」
「……は?貴方大丈夫ですか?」
「まさかこんな所にこのような人がいるとは……」
「悪かったですね。こんな場所で」
「我と共に来ないか?そなたのような人と別れるのは惜しい……」
「私は今すぐ別れたいのですが。御用事はこの封筒でしょう?勝手に受け取らせていただいたのでどうぞお引き取り下さい」
「そのようなつれない事を言わずとも……な、手に持っているのは……?」
「どうぞ、お引き取り下さいませ……っ!」
「……どうした。しつこいセールスだったか?」
「しつこさでは同じようなものですね。いや、それ以上でした」
「なんだ、メットしてなかったから誤解でもされたか?」
「ええ、そんな感じです。次からは私、出ませんからね」
「そんなに嫌な奴だったか」
「顔面にお見舞いしてやるくらいには」
「……そうか」
「……誰ですか、この頭の沸いたミイラを招き入れたのは」
客が来てる、と言われて来てみればこれですよ。
「酷い言われようだ。だが、そなたの口から出れば暴言も可愛いものだ」
「沸いているのは頭だけではなさそうですね。ともかく、お引き取り願えますでしょうか」
「それは出来ないな。今日こそ我と共に来てもらおうか」
「お断りします」
「またそのようなつれない事を……。だが、そなたは我の妃になるのだ」
「……本当に沸いてますね。貴方、勘違いをしてらっしゃるのでは?」
「この想いが勘違いな訳無かろう」
「私としては、是非とも勘違いであって欲しいのですが。そもそも、私はこれでも一応、男性型なのですけれど。そういうことは女性に言って差し上げたら如何です?」
「……そなた、男なのか」
「さあ、これでもう私に用は無いでしょう?どうぞお引き取り下さい」
「……」
「……聞こえませんでしたか?お引き取り下さい。玄関はあちらです」
「……素晴らしい」
「は?」
「素晴らしい!性別すら超越する美……やはりそなたは我の妃に相応しい!」
「だからそういう事は女性に仰ってください。……ああ、だから馴れ馴れしいですね!触らないでくださいっ!」
「そなたに触れずにいられる訳がないだろう?そなたの全てが美しいのだから……」
「……げんに」
「?」
「いい加減にしてくださいっ……!」
「――スター、今お暇ですか?頼みたい事があるのですが」
「君の頼みなら忙しくたって聞くよ!どうしたんだい?愛しいクリスタル」
「ちょっと地に還した方が良いゴミがありましてね。私では運べないので、手伝っていただきたいのです」
「了解したよ!で、そのゴミは……」
「これです」
「これ?……でも、君がそう言うならこれはゴミなんだろうね。じゃあ捨てに行こうか」
「お願いします」
「ねぇ、クリスタル」
「何でしょうか」
「僕、君の傍にいるだけで本当に幸せだよ。今更だけどね」
「そうですか」
「うん、そうなんだ。愛する人の傍にいる事が出来る……これ以上の幸福がどこにあるというんだい?」
「貴方の価値観から考えて、それ以上があるとは思いませんね」
「だろう?ふふ……まったく僕は世界一、いや宇宙一の幸せ者で困るよ」
「幸せそうで何よりです」
「ありがとう、愛しいクリスタル」
「……」
「……どうしたんだい?見つめてくれるのは嬉しいのだけれども……?」
「スター」
「何だい?」
「……お疲れですか?」
「……ああ、やっぱり君には敵わないよクリスタル。上手く隠したつもりだったんだけど」
「貴方の嘘はすぐ顔に出ますから……仕方ないですね、E缶を持ってきて差し上げますよ」
「……!ありがとう、愛しいクリスタル!」
「……毎度のこと、ご苦労様だな」
「ジャイロ。見てたんですか」
「別に今更だろ。しかし、懲りないなアレも」
「いい加減、どうにかなりませんかねぇアレ。私疲れたんですが」
「あそこまでされて諦めないからな……。ちょっとやそっとじゃ無理なんじゃないか?」
「ということはまた来るんですかね……今度こそ本気でやってしまそうです」
「……何でも良いが、お前ももう少し話を聞いてやればいいんじゃないのか。アレも別に馬鹿ではなさそうだし……」
「嫌です」
「即答するほど嫌か」
「ええ、嫌ですよ」
「……お前にそこまで嫌われることが出来るのもある意味才能だな。しかし、スターとはまだ普通に話す癖に、なんでアレは駄目なんだ?」
「だって」
アレが太陽と言った顔が、何とも言えない顔で笑う。
「私の外見しか見ていない方とお話する内容なぞ無いでしょう?」
BACK
PAGETOP