白黒的絡繰機譚

さいごの話

「誰の一番にも、なったことはないんです」

君がそう言って、寂しそうに笑うから、ほおっておけなくなった。
最初は私が声をかけるだけでも、肩を強張らせていた、そんな君が。やがて美しい髪を梳かせてくれるようになって。
見送った生徒たち何人かに先を越されてしまって、寧ろ早くしろとせっつかれる方になってしまった。最後の子が卒業したら、とそっと決めていた時から、此処まで……随分と長く待たせてしまった。

「おはようございます。……本当に、貴方は寝起きが悪いんですから」

身体が治っても起きる気配のない私を毎日のように見舞っていた君は、殆ど限界だったんじゃないだろうか。きっと最後の支えは、……あの子達だったんだろう。彼らは良い巡り合わせをしたし、私もそうだった。皆、唯一無二の、半身を手に入れた。
私は本当に、本当に幸運な男だ。彼ら以外の周りはずっと、他がいくらでもいると言っただろうに。それでも、君は私を選んでくれた。

「どうして私を待っていてくれたのかい」
「だって私を一番にしてくれる人は、貴方しかいません。……いいえ、私は、別に他の人の一番になりたかった訳ではなく、貴方のそれになれたら、他はどうだっていいんです」

だから、彼らの面倒を見たんですよ、と彼女は自虐する。酷い女でしょう、と彼女が笑う。

「アース」

彼女を抱きしめる。髪型が崩れると抗議するでもなく、私の腕の中に収まって言葉を待っている。

「どんな理由であれ君がしたことは素晴らしいし、私が君を嫌う理由なんてどこにもない」
「わた、しは」
「君だから、彼らは今日祝福してくれるんだろう?」
「……はい。そうだと、いいです」
「さあ、これ以上君も、彼らも待たせるわけにはいかない。……手を」

身体を離して、手を差し出す。そっと乗ってきた彼女のそれを握って、二人で歩く。
これからも、これからも。彼らがそうであるように、私も君と。