私の夢を見てください
その日、どうも彼は少々面倒だったのだと思う。まあ毎日毎食、大量に作っていればそんな日もあるのだろう。
「ほら、メシ炊けたし、具はあるからあと好きにしろ」
「我が主、好きにしろ……とは?」
全員の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる。
その様子に、彼は少し呆れたらしい。
「分かるだろ、自分で握って食えよ、ってことだよ」
「……恐らく、ここにいる誰もが貴方の言いたい事の半分も理解していないかと」
「まじかよ。ここって握り飯とかねぇの?」
「さて、聞いた事はありませんね」
あからさまに溜息を吐くと、彼は手を濡らし、炊けた米をある程度手に取ると、その中心に、焼けた魚の身を置いた。そして握るようにして形を整える。
「ほら、こういうこった。握り飯」
「ああ、言われれば。その名の通りですね」
「好きなの入れて、好きに握って食えよ。あ、手濡らすの忘れんなよ。くっつくからな」
そう言うと、彼は私の出したテーブルに突っ伏す。
彼以外はと言うと、言われた通り手を濡らし、それぞれの手の大きさに合った握り飯を作り始めている。ホノりんだけは手がないので、ティランが作ったのを分け与えていた。相変わらず仲のいい2匹だ。
「……お疲れですか? 我が主」
私はというと、別段空腹でもないので、主の隣に座って声をかけた。
「……どっかの誰かのお陰でな」
恨みがましい声と、腕の隙間から睨むような視線を向けられる。
「それは酷い事をする者もいたものですね」
私としては、別に無体を働いたつもりは全くないのですがね。
寧ろ貴方が煽った……などと言ったら、食事抜きにでもされるでしょうか。別にそんなに……というか、神なんて食べずとも生きていける種族ではありますが。
「……ちょっと寝かせろ。片付けぐらいには起きる」
「ええ、分かりました」
おやすみなさい、我が主。貴方に暫しの休息を。そして。