白黒的絡繰機譚

かみさまのいうとおりに雨宿り

「ついてねぇ……」

空模様はどんより灰色。木の下に集うモンスター達は、ダメージが残っていないにも関わらず、心なしかぐったりとしている。
火属性だからか……と火野が一人ごちていると、いつも通り頭上から声がした。

「だから言ったでしょう我が主よ」

もうすぐ雨が降る、という彼の言葉を無視して、歩みを進めたのは火野だった。
そうして、先も見えないどしゃ降りで身体を濡らし、慌てて木の下に逃げ込んだという無様な結果が残る。

「いやだって、晴れてたじゃねぇか。なあシャイターン?」
「……ああ」

量の多い髪をべっとりと濡らしたシャイターンが、同意を示して頷いた。……筈だ。濡れた髪の毛がほとんど顔を多い隠し、首の動きを見る事も叶わない。

「別に火野さんは悪くないぞぉ!」
「……」

ギガンテスが声を張り上げれば――それでもいつもに比べればかなり小さい――アースゴーレムも頷く。
彼女だけは、木属性だからか、特に変わりはないようだった。

「……まあともかく、雨が上がるまではここで待機ですな」
「だな……。お前ら身体拭いて寝とけよ。あ、ほらティラン大人しくしてろって」

火野の言葉に従って、各自身体を拭き、木に身体を預ける。本日も連戦をしており、回復はしているものの、疲労がないわけではない。
ゆるゆると、皆睡魔の誘いに抗えなくなっていくのが火野には分かった。

「疲れてんなぁ……」

火野自身も慣れない異世界での生活に、疲れがないわけではない。だが、彼らに比べると……と思ってしまうのも事実だ。
雨が上がるまで、自分は起きてようかと殊勝な事を思う。

「火野さん」
「……っ、ロキ」

眠ってしまったティランとホノりんを膝に抱える火野の横に、ロキが浮いていた。

「お疲れです」

つう、とロキの指が火野の頬を撫でる。

「お前もな、ロキ」

指の動きを気にする事もなく、火野はロキに声をかける。

「火野さん、私言いましたよね」
「ん? だからお前の言うとおりだったけど……」

くい、と顎を持ち上げられる。
まるで猫のように細められた瞳が。

「濡れる前に、休みましょうと」
「あ、ああ……ロキ?」

顔が近づく。
周りは、皆疲労によって、深い眠りに落ちている。
神の、狡知の神の、端正な顔が、火野のそれに近づいて、重なる。火野の口内に『悪戯』するだけして、離れて笑った。
指の動きも、上げた声も、全ての音が行為が、雨に流されて誰にも届かない。

「そうすれば、こんな事にはならなかったのに、ねぇ?」

――神様の言う事は、いつだってきっと正しい。