白黒的絡繰機譚

奇跡、来たる

放課後、教室、二人きり。
何故か、……俺に盾が跨ってる。

「はがねの……」

艶を含んだ声、赤みを帯びた頬、潤んだような瞳、熱を持て余しているように熱い身体。
こんな事が起こればいいのに、なーんて思ってたことが現実になってる。

「じゅ、盾……?」

この状況はハッキリ言って嬉しい。
……嬉しい、のだが。

(嬉しすぎてどうしたら良いのか分かんねー……)

どうにかこうにか押しの一手で盾を落として付き合うようになったけど、まだまだ盾は俺に突っかかってくるばかりだ。
いや、それが盾の可愛いところだから、それはそれで良いんだけど。
でもまぁ、何時も俺から話しかけたりしてるから思うわけよ、やっぱり。
『盾の方からアクション起こしてくんねーかなー』ってさ

「はがねのっ……」

切羽詰まった盾の声……ぶっちゃけ下半身に、クる。

(いやこれはマジヤバいって!頑張れ俺!負けるな俺!)

俺だってそれなりのモラルってのは持ってる。
盾はまだ16歳だから、流石に手ェ出すのは早いだろ?(本人に言ったら「アンタでも流石にそれ位の常識はあるんだ」と言われた)
そう思って色々と……我慢してきた。
だけどさぁ……やっぱこれは反則だろ、反則!

「盾ー、もしかして俺をからかってんだろー?」

わざと明るくそう言ってみる。
もしそうなら早く言ってほしい……俺も今なら引き返せるし、色々と。

「……からかってなんか、ねぇよ」

か細い声で、盾はそう言った。
俺を見つめる瞳もそれが本心からだと主張してくる。
……マジかよ。

「……あー、盾」

グルグルと言葉が頭を回る。
俺はそれらをゆっくりと繋げていく。

「俺は、お前のこと好きだ」
「……知ってる」
「だからさ、一緒に居たいし、キスしたいし、それ以上のこともしたい」
「…………」
「でも、俺は教師だし、盾は生徒だし、男同士だし……なにより盾が嫌なんじゃねーかなって思ってた」
「だからとりあえず、盾が卒業するまではなんとか我慢しようと思ってたんだけど」
「……だけど?」
「こんな据え膳逃すのは、流石に無理」

だから、

「……覚悟、しろよな?」
「…………」

顔をさらに赤くして、首を縦に振ってくれたからには抑えはいらねえよな?
教師とか、生徒とか、世間体とか、モラルなんか、クソくらえ!
俺は盾さえいればもういいや。