白黒的絡繰機譚

アナログパステル

この科学的でメカニカルな近代都市の中で、馬鹿みたいにそぐわないけれど。


きっとさ、もっと上手い方法はいくらでもある。
それこそ、掃いて捨てるほど、ね。
でも、そんな方法じゃ俺たちはこんなことになんてなってないと思う訳で。

「眠い」

そして、そんなちょっと哲学的?でめんどくさい事を考えると、眠くなる訳で。

「だろうなー。あ、良いよ。寝ちゃっても」

折角の休日に二人きりだっていうのに、まったく俺の恋人は優しいよね。
こっそり呟いた一言を拾って、気遣いまでしてくれる。

「良いの?じゃ、膝枕でもしてもらおっかな」
「……どっちかって言うと、俺はやってもらいたい方なんだけど……」
「固いこと言わない。俺が好きなら膝を貸して頂戴」

イイデショ?と笑えば絶対に断らない。
ちょっとヘタれてるくらいのその優しさが、俺は好きだ。

「んー……」

ジーパンを穿いた足に頭を乗せる。
正直、それなりにいいガタイをした男の膝枕はあんまり気持ち良くない。
でも、別に止めようとは思わない。

「……つか、俺の膝で枕になる?」
「うーん……微妙なとこかな。ちょっと硬すぎるかも。でもこれでいいや。ソニック温かいしねー」

子ども体温、とかそういう訳でなくソニックは温かい。
多分、俺だけ補正がかかっているんだろうね、きっと。

「まぁ、パナが良いって言うんなら良いけどさ……」
「んじゃ、俺本格的に寝かせてもらうね。昨日はあんまし寝れなかったし……」
「!あ、あれは……その……えーっと……ゴメンナサイ」
「別に謝らなくても良いんだけどね。ソニックの所為だけじゃないんだし」

顔を真っ赤にして、慌てながら謝ってくる様子がなんだかおかしい。
誰かの所為、とするならば『俺たち二人の所為』というのが一番正しい言い方なのに俺の言葉にだけ反応してこうして心から謝ってくるのだから。
……きっと、俺の自惚れとか勘違いなんかじゃなく、ソニックは俺のことを心から愛してくれてるんだ。
こんな時、俺はその思いを噛みしめる。
それが間違ってないと、偽りないことだと。
そして、

「ソニック」
「ん?」
「好き。大好き。愛してる」

そして、俺も間違いなく、偽りなく心からソニックを愛してるんだということを。

……技術は瞬く間に進化する。
それはもう俺たちが気付かないところで、でも確かに、確実に。
その恩恵に与っている科学的でメカニカルな近代都市の中で、馬鹿みたいにそぐわないけれど、それでも、

俺は、俺たちはこんな全てに取り残されそうなくらいゆっくりとした、不確かな日々を大切だと思うんだ。