我、偉大ヲ目指ス者ナリ
それは殆ど何かに似ていた。それは俺の中の何かを目覚めさせるには、十分すぎて。
「……っは」
アバラを何本かやられたが、殺られるワケにはいかなかった。
……単純に死にたくなかったんだよ、勿論。
「くそ……っ」
だけどそれは、今までとはワケが違う。
真備、お前は当たり前だがこんな奴らに殺されたりしないだろう?
……だから俺は死にたくないんだよ。
掴んだソレは何年か振りに扱う物だったが、違和感もなく手に馴染んだ。
投げる動作にも鈍りはなく、赤ペンは吸い込まれる様に的へと当たる。
巨大な的はたった15cm足らずのただの赤ペンで地に伏せていった。
――赤ペンは昔の名残だ。
自分が漂流作家という偉大なるNo.1を夢見ていた昔の名残。
……ああ、今、分かった
それを持ち続けていた理由も、今使った理由も、全てが霧が晴れるがごとく綺麗に俺の前へと現れる。
「……真備」
それは何かが目覚めた証。
「俺は、」
目指すか?
目指せるか?
お前となら、きっと?――いや、絶対、だ。
No.1に向かない男はNo.2となり、新たにNo.1へと上り詰める事の出来るだろう少年を裏から支えるのだ。
なぁ、真備……。
出来るだろう? お前なら。
それは何か――まるで誓いの言葉のような――にも似ていて、確信はないが、きっとそうなるだろう。
その夢物語が現実になろうとなるまいと、俺達は何時までも2人でこの世界を漂流するのだ。