白黒的絡繰機譚

わるいおとな

「……わりと今までと変わらないもんなんスね」

仕事終わって、プロデューサーも一緒に4人で飯食って、途中でピエール寝ちゃったから俺んち運んで。
ベッドは勿論ピエールが気持ちよさそうに寝てて、その横に座ってるのは俺と恭二。そこで言われたのが前述のそれ。

「そりゃ慣れたもんだしね」

ピエールが先に寝るのは当たり前だし(なにせ15なんだから)俺んちなんてもう勝手知ったるもいいとこだと思う。逆もしかり。

「そうじゃなくて……」

ぷしゅ、と持ち上げたプルタブから泡がはみ出る。飲み足りない俺が1人ビールを開けてるのも、よくある話。てか恭二ももっと飲めばいいのにとか思ってみたり。
ま、恭二はまだ若いし俺とは違う。ビールの味ばっかり先に覚えても仕方がないか。
……そう、若いんだよなぁ。

「最近さ、やっと分かるようになったんだよね」
「みのりさん?」
「地元の知り合いが、嫁を女に見れないって言ってるの」

俺も年取ったよなー、と呟いてビールを煽る。いやぁ沁みるね。

「子供出来ると余計にだってさ」
「……みのりさん」

恭二の声のトーンが下がる。低い声もかっこいいよね、なんちゃって。
酔っぱらいの適当な言葉で何を思った?どう感じた?ごめんね、わざとだよ。本当はそこまで酔ってないし、そんなことも思ってない。ちょっと分かるくらい。

「恭二は、真面目だね」

真面目だね。だから言ったよ。悪い大人だからね。言ってない過去は沢山あって、言えない想いも沢山。でもそれでいいじゃない?

「みのりさん、俺は」

色々言いたいよね。分かるよ。そうしたから。
でもさ、恭二。

「でも俺はちゃーんと、恭二のこと男に見てるよ」
「……!」

これで済んじゃうからやっぱり、俺は悪い大人。
ドキッとしたとこ悪いけど、今日はピエールがいるから、ね?