白黒的絡繰機譚

恋人

朱雀への気持ちを単語で表すならば、やはり相棒だな、と玄武は思う。
一緒につるんでいるだけだった時も、アイドルになった時も、そして今も、それは変わらない。恐らくそれは、朱雀も同意見のはずだ。

「なのに、何でかね……」

夜中に目が覚めると碌な事を考えない。それがやらかした後だと尚更だ。
床には制服が散らばっているし、明日の健やかな一日には巡り会えない身体状況。大体朱雀のせいだが、それをなあなあにして流されてしまった自身も悪いのだ、と玄武は溜息を吐く。

「……」

ふと、考えるのだ。
自分達の関係性において、肉体関係まで必要だったかと。
それがあってもなくても、自分達が今生の別れをするわけでもない。関係性のプラスアルファにしては、リスキーすぎる付随物だ。
流石にこんなことは、番長さんにも言えやしねえと胸にしまい込み続けるしかない。

「朱雀」

名前を呼ぶ。どうせこの相棒は起きやしない。そういう事も知っている。
もう一度身体を横たえて、朱雀の間抜けな寝顔を見つめる。起き上がっていては、それすら録に見えやしない。

「……」

真夜中に頭を使っても、碌な考えには至らない。
どれだけどうこう考えても、行き着く答えは相棒しかない。
友人ではなく、恋人ではなく、相棒。それでいいのではないだろうか。

「朱雀」

音量を落として、自分でも驚くくらい甘い声色で名前を呼んだ。
それができても、やっぱり相棒なのだ。

「あ……っ?げんぶ?」
「おっと、起こしちまったか」
「……。まだ、ねてようぜ」

返事をするよりも早く、朱雀の腕が玄武を引き寄せる。寝ぼけているだろう割には、随分と力が強い。
その力強さが、今はやけに心地よかった。それに身を任せて、瞼を閉じる。
……ああ、そうだ思い出した。
辞書で相棒を引くと、意味にパートナーと、そう、出るのだ。