白黒的絡繰機譚

仕事開始まであと少し

女装ネタ

さて、と考える。
自分はそれ相応の(出来るならば相応以上の)対価を得られるならば、まあ大抵の事はしてもいいと思っている。それに今の身分は売り出し中のアイドル。仕事なんて選べる立場なんてない。そんな事は百も承知。
が、かと言ってううむ、これはどうなんでしょーね。

「山下くん」
「……はい」
「これは、一体どうすべきものだろうか」

それはどっちかって言うと、俺が聞きたいね。
今日の衣装だと渡されたって事は、まあ着ろって意味なのは分かる。俺以外の2人の衣装が女物?ま、そういう仕事もあるよねー俺じゃなくてよかったー、位の気持ちでさっさと着替えた。そこまではいい。

「はざまさんは、それが何か全く知らないんです?」

俺が指さしたのは、女装したはざまさんが両手でつまむように持ってる衣装の一つ。所謂ガーターベルトってやつだ。因みにはざまさんとるいの衣装はナース服で、俺は白衣。なにこれAVの撮影?とか思ったけど、流石にそうじゃないらしい。一瞬考えてうわぁ……ってなったのは流石に秘密だ。

「ああ……山下くんは分かるだろうか」
「まあ分かるっちゃ分かりますけどね……。別に付けなくても良いと思いますよ」

だって今どきそれなくても大丈夫らしいって聞いたことがあるようなないような。それにはざまさんのストッキングも別にずり下がってなんかないし。
とか思いつつ適当にした俺の返事にどう思ったのか、硲センセは少し眉間にしわを寄せた。

「そうはいかないだろう。衣装として用意されたのだから、ちゃんと身につけるべきだ」
「……とは言っても……ねぇ」

ちらり、とギリギリのミニスカートと、ストッキングの間から覗く目に痛いくらい白い太ももを見る。そういやこの下はどうなってるんだろう。……まさか、ね。でも、ガーターつけろってんなら、なぁ……。

「山下くん、知っているなら教えてくれ」
「……ちょっと聞きたいんですけど」
「なんだろうか」
「その下って普段通りです?」
「下……?」
「その、スカートの下」

『普段通りだが』と言ってくれれば『じゃあ付けれませんよ』で終わる。

「勿論、用意してあったものを身につけているが」
「……は?」

さて、今日の仕事は本当に健全なものだったっけ。もしかしてドッキリか何かかな。それならきっと、もうそろそろるいが「ドッキリ成功」って看板を持って帰って来てくれてもいいんじゃないかな。そうじゃないの?
それか夢だったってオチでもいい。それだと俺ってどんだけ欲求不満なの?って事になるけど、それなら俺が目覚めた時にうなだれるくらいで済むから被害は最小限だと思う。でも俺、多分そういう趣味はなかったと思うんだけどなぁ……。

「山下くん」

ずい、とはざまさんが一歩近づく。
ごくり、と唾を飲み干して……さあどうする、俺。