光速達
「これ」差し出されたのは、極々ありふれた白い封筒だ。
「こういうのは断って頂きたいんですが……」
初めてのことではない。私に相談を、運勢を見てもらいに来た筈なのに主目的が変わってしまうユーザーは多い。大抵面倒事に発展するので、見るだけでげんなりする。
「違う。……宇宙の彼方からの、届け物」
「宇宙の……」
指先に触れた封筒は、地球の温度しか伝わらない。宇宙の彼方からやって来たとは、到底思えない。そもそも、封筒が届くのならば渡してくるのが第三者になる筈がない。
「キミじゃなくてボクにわざわざ通信繋いできたと思ったら、意味不明なデータも一緒でさ」
相応以上の手間と時間を使って指定されたメッセンジャーは呆れ顔だ。けれど、私に直接伝えないのであれば、他に託せる相手もいなかったのだろう。
「それを復元して印刷して渡せって」
「お手数をおかけしました、グラビティー」
別にいいよどうでも、と気だるげな返事。それが内心と同じものなのか探る余裕は、私にはない。
「ああ、中身は知らないし興味ないよ。スターも見るなって何度も言ったから。……ラブレターは他人に見せるものじゃないから、だって。ならなんでボクに頼むんだか」
溜息を聞きながら、封筒を開いて中身を取り出す。便箋には質素なただのコピー用紙に浮かぶのは、見慣れた彼の筆跡に似た印刷だ。
「人に運んでもらうのも、ラブレターの醍醐味だと前に言っていましたからね」
見慣れた字、いつもどおりの甘ったるくなる内容。筆跡まで含めたデータを作る程に宇宙は時間と孤独に満ちているのか、それとも忙殺の中でも拘ったのか。貴方はこれらを全て、恋愛の醍醐味だと思っているのだろうけれど。……私は、ただただ、貴方に会いたくなる。
「グラビティー」
「……返事、ボクの気が変わらないうちに用意して」
それが貴方の元で手紙になる頃、貴方は一体空の何処にいるのだろう。
選びぬかれた便箋と封筒を見るのは、乾いていない万年筆のインクの香りを吸い込むのは、……そんなものより、貴方を、光よりも、速く。