星間終電
夜の此処は、嫌いじゃない。何処かって? 別に大した事ない理由だ。大好きでも大嫌いでもないなら、そんなもんだろう?殆ど空と同化したように暗い、空中公園。つまりは職場だ。時間が時間なので、勿論人間は一人もいない。稼働している自律ロボットも俺だけだ。この唯一もあと少しでゼロになる、そういう時間だからだ。
手と足を止めて、視線を上へと向ける。この高さなので邪魔な光もなく星しか見えない。それを見るような企画の季節はまだ先だ。俺には星をどうこう思う情緒やら何やらは特にないので、見たところでそういう感想にしかならない。星や星座の知識はあれど、それは夜間開園イベント用だ。普段はアクセスしようとすら思わない。
「ん?」
そんな星の間を、何かがすり抜けていった。ガラス張りの上の上、勿論それが何かなんて映像だけじゃ分からない。……まあ、俺はそれが何かはよくよく知っているんだが。
地面を蹴って羽根を回す。何かは更にすり抜けてはこちらに近づいてくる。俺が限界まで近づくのと、それが降り立つのはほぼ同時だった。天窓の鍵を遠隔で開けて少し持ち上げると、あちらから持ち上げ手を伸ばしてくる。
「地球の奴らは随分勤勉だな」
「そりゃ勤勉じゃないと人間サマが困るからな」
俺の返しに一瞬怪訝そうな、呆れたような顔をしたが、言い返してはこない。そもそも、分かってたから此処に来たんだろうに。口の端で笑いながら、伸ばされた手を掴んでプロペラの回転を止める。俺が通るにはかなりギリギリだから、こうして支える奴がいないと使う気にならない天窓だ。折れちまったらどうにもならない、色々な意味で致命傷だ。
「で?」
ガラスに腰を下ろして、また視線を上に向ける。多少近くなった星には、やはり思うものもない。
「……分かってんだろ、お前」
「そりゃあ、な?」
お互い、こうして星を見上げて十分な質でもない。だが、俺からしてやる気もないから早く諦めて素直になれよ、ジュピター。