日給XXX
マスクレス描写有り
蓄積データ、そこからのシミュレート、繰り返し。するまでもない、分かりきった結果しか並ばない。
「おい、手が止まってるぞ」
下の方からの声に返事はせず、うっかり止めてしまっていた動作を再開する。客が来なくともガラスは汚れるんだから面倒だ。いや、汚れるからこそ俺がここに居てもいい理由にはなっているんだが……。結局は無償の、便利な労働力にされてるだけだ。それを当然のようにする奴と、こうして手を動かしてる俺のどっちが馬鹿なんだろう。考えるまでもなく後者なんだろうが。暫く単調な清掃活動に勤しんで、地上に降りた。恐らくそれを把握しているだろうに、依頼主はこっちを見もせず植物の手入れをしている。
「終わったぞ」
大股で近づいて、声をぶつける。向いた顔は、通常運転のイマイチ俺に興味がなさそうなそれだ。
「おー、ご苦労さん」
少しも労ってない口調のそれに、だがほんの僅かに労働が報われたように受け取ってしまう俺は相当だ。
「さて次は何をしてもらうかな……」
「なあ」
俺なんぞ気にせずに、好き勝手に。それがコイツだってことくらい、分かってる。だが、分かっているのと受け入れてるのはまた別の話だ。データ、シミュレート、繰り返し、結果。分かっちゃいるが、だからって止まれるか。落ちるにしろ、進むにしろ、もう全力吹かした後だ。青が胡乱げに見つめてくる。
「いい加減、給料とやらでも払いやがれ」
発声されたのは高確率で駄目な選択肢になってしまったが、今更言葉選びで大して変わりゃしないだろう。胡乱げな青は、変わらない。
「どこでそんな言葉覚えてきた? そうだな……」
マスクを外した口元は、どうも面白がっているようにしか見えない。薄い唇のそれが近づいて、ぴたりと止まる。恐らく残り1センチ。ミリの誤差もなく、正確に。
「……全部片付けたら、この隙間を埋めてやっても良いぞ?」
「おま……っ、忘れるなよ!」
隙間程度で足りるもんか。全部の雑用片付けて、それ以上のものを払わせてやる!