白黒的絡繰機譚

まるで己がしたように

「うげぇ……」

スマホの非通知着信、ついそんな声を漏らす。匿名にされたことで、余計誰だか分かりやすくなってしまっている。これを普通の、よくある迷惑電話として無視するのは得策じゃない。――そもそも大昔なら兎も角、一応一般人にも名が通ってるロボットへの連絡なんて、本体程じゃないが何重にもプロテクトが掛かっている。それを全て潜り抜けた上で匿名に、なんてできる奴少ない。

「はい」
『やあ、大丈夫?』
「さっきまでは」

スマホの向こうで笑い声がした。あっちは恐らく冗談が上手いとでも思っているんだろう。俺は本気で言っているが。

『今回は中々、大怪我だったみたいだね。言ってくれればお見舞いくらい行ったのに』
「チャンプはお忙しそうですんで。そもそも、意識が戻った時には直ってるもんでしょう」
『そうなんだけど。気分的な?』

この人は、ターボマンは一体俺の何のつもりなんだろう。知りたいけど、聞きたくはない。何となく分かるのは、俺が仕事でたまにあること――つまりスタントでの半損事故で音信不通だったのが、何故か不満であるらしいことだ。別に密に連絡を取ってるわけでもないが。

「それで、何かご用で?」

そんな、密じゃない連絡があるなんて、絶対に碌なことじゃない。でも、向き合わないわけにはいかない。そうするしか、選択肢がないんだから。

『うん。事故で壊れたパーツくれない?』
「……スポンサーいなくなったんです?」

先程より大きい笑い声が響く。いや、俺だってそうじゃないとは思ってるけど、脈絡がなさすぎるから。

『そこは全然問題ないさ。単純に君だったパーツが欲しくてね』
「俺だった」

聞き返す。聞き返す必要なんかないのに。
ぼんやりと、顔が見えないと逆になんだか感情が分かりやすいような気がしてくる。それはきっと――俺にとって、面白いことではなさそうなのに。

『拉げて、速度の熱で曲がって、使い物にならなくなった君だったもの……なんて、随分素敵だろ?』

高速と、炎を操って戦うロボットが、宣う。俺だったパーツを眺めて、表情の少ない顔で笑うのが想像できる。――ああ、俺には断る選択肢がない。