白黒的絡繰機譚

矯正はいらない

「君って変わってるよね」

言われ慣れた言葉だ。外見、思考、嗜好、全てに対して様々な他人にそう言われてきた。それに関して、特に思うことはない。量産型ではない、一点物の設計ともなれば平均から外れることは必至だ。オレもオマエも、平均からは大きく外れている。

「そうだな」
「……怒った?」
「いや。ただ、オマエが言うのは……予想外だった」

他人からそう言われることを、きっとオマエは好まないだろうと思っていた。そして、自分が好まないそれを他人に言うこともないだろうと。

「ぼくだって自分を棚に上げて思うことはあるよ」

口を開きかけて、止めた。オレの知らないオマエのことに触れる時期は、恐らく今ではない。それがオマエを傷つけないためなのか、ただオレが傷つきたくないだけなのかは定かではないが。

「ぼくを好きになるなんて、家族だけだと思ってた」

反論も相槌も打たず、言葉を待つ。

「でも君は、ぼくが気にすること、皆が気にすること、それ以外も全部……気にしてない、とはちょっと違うんだろうけど……なんて言えばいいのかな」

オレを見上げる視線とかち合うと、僅かに逸らされる。言いたいであろうことはある程度推測できるが、正確に表現するのは難しい。二進数に分類出来ない。いや、したくないのだろう。理由もやはり曖昧だ。

「……恐らく適切ではない、が」

だが、オレ達がロボットであろうとも、このようなものを指すのは、曖昧かつ無責任な一言しかない。

「恋は盲目、と言うのだろう」
「……。いや、うーん……それは……。でも、まあ、間違っては……ないか……」

オマエの表情が緩んだように見えた。平均的な人型ロボットとは違う構造のオマエのそれはほぼ全てが目の動きではあるが、そこにあるのは確かに表情と判断可能なものだ。

「オレは変わっているからな」
「やっぱり怒ってない? でも、お互い様だしね」

他人と違う、他人なら選ばない、他に誰もいない、オレ達以外には価値のないものの中心でのやり取りは、やはり変わっているのだろう。だが、それでいい。オレ達以外は、理解できないもので、構わない。それで十分なのだから。