手土産と対話
ウェーブ不在のワイリー+ネプチューン
「裏切り者が何の用じゃ」
発言者である老人はこちらを見もしない。老人からすれば私を含めこちらは裏切り者だろうが、自身だってこちらを利用していたのだからお互い様だろう。言っても不機嫌にするだけだろうし、此度の主題からしてそれは宜しくないので口にしないが。
「この星では礼儀だと聞いたので、ご挨拶に」
こちらつまらないものですが、と適当なケースに入れた土産を辛うじて露出していたテーブルの端に載せる。私からすればありふれた鉱石や合成物だが、この星であれば貴重だろう。老人はようやく椅子ごとこちらを向き、しかし私を見たのは一瞬でケースの中身を検めている。欲に忠実で、実に生命体らしい。
「で、何の挨拶じゃい」
「お宅の息子さん――ウェーブさんを私にください。……で合ってますかね?」
老人が顔を上げる。そこに驚愕の表情はない。あるのは、無関心のような呆れ顔だ。予想外のそれに、私の方が首を傾げる。
「どこのロボットも似たりよったりの事を言いおる」
「あら、私だけじゃないんですねえ」
多分私の仲間はこういう事はしないだろうから、恐らく言いに行くのが複数いるのだろう。
この星のロボットは、文明レベルの割には随分と発達しているようだ。尤も、全てがそうではないが。突き詰めればその発達の先頭には二人の老人がいるだけなのだろう。
「どいつもこいつも……。くださいと言われてくれてやる気はないが、万が一あれがワシより貴様を取ると言うなら、止める気はないのう」
老人にしては随分と寛大な処遇だと感じる。宇宙からすれば小さな、しかし生命体一つからすれば巨大なものを欲しがり続けているのだから、自分のものを手放したりしないだろう、とばかり思っていた。だからこそ、わざわざこうやって義理立てをしに来たのだ。勿論、どう返事をされてもやることは変わらないが。
「それなら、頂けそうで安心しました」
彼はまだ素っ気ないけれど、ゼロでもマイナスでもないのは十分感じられる。
「一つ言っておくが、書き換えやら強制やらは無しじゃぞ。その時は全力で取り返しに行くからの」
「……なら、時間がかかりそうですねえ」
こちらが侵略者である事なぞ、老人はよくよく知っている。もしかしたらそれを踏まえて暇つぶしの遊戯だと思っているのかもしれない。
やはり一筋縄ではいかない老人だ、と脳内プランを書き換えつつ感服した。