白黒的絡繰機譚

相識型愛情

ウェーブの構造についての捏造設定・メットレス描写有り

「貴方を愛しているんです」

前後も脈絡もなく、そんなことを言われた。好きと嫌いは分かるけど、好きの上なんて俺には分からない。でも、分からないけどそれはそれとして、あーコイツってだから俺に対してあんな感じだったんだ? と納得がいった。納得がいって、困るとか嫌だとかそういうのは、浮かばなかった。

「……。それで、どうしたいの」
「宇宙の誰よりも貴方を知りたいんです。そして、出来ることならば貴方も同じように思って欲しいと。それが愛だと、私は考えます」
「スケールが無駄に大きいな……」

これだから地球外ロボットは。ま、今更か。でも知りたいし知って欲しいなんて随分な話だなと思った。コイツは俺と違って、不安なんて感じたことがないんだろう。だから言えるんだ。そう、思った。

「愛はそういうものですよ。無駄どころか足りないくらいですし」
「……ネプチューン」

名前を呼ぶ。似てるような気がするけど全然違う、どこか遠い星のロボット。多分、コイツ以外に俺を知りたいなんて言う奴は宇宙を探したっていないだろう。……けど、知りたいことを知って、それでも同じことが言える奴はいるだろうか。

「なら、博士以外知らないこと、教えてやる」

右手の先を使って、ロックを解除したヘルメットを持ち上げる。その下にあるのは、中途半端に人型にしたせいで酷いことになっている顔だ。必要なくても人型なら備えている歯も舌も唇もない、ただ喉へ繋がるチューブだけがある、俺の顔。人工皮膚すらなく、必要もないけれど見た目的には欠損しているような、酷い顔。誰にも、仲間にも見せていない、見せられない、そんな顔。俺だって積極的に見たくはない、そう思う顔。

「こんな俺を、アンタはまだ愛してるとか言うの?」

さあ、アンタは最初になんて言うんだろう。いや、そんなの分かってる。分かってるけど、俺には言ってもらわないと飲み込めない。
アンタは、ネプチューンは微笑む。嬉しそうに、笑う。怯えず、嫌悪せず、嘲笑せず、悲しみもしない。マイナスなんて一切ない、そんな風に。

「ええ、勿論。……貴方はそんな泣きそうな目をするのに、それでも私に見せてくれるのですね。もう一度言います。貴方を、愛していると」

……アンタは、やっぱりそこまで言うんだな。

「……なら俺も、アンタを……同じように……」

じゃあ俺も、そこまで言える理由を、愛を、アンタから知りたいよ。