白黒的絡繰機譚

好きだから、つい。

「貴方、私のこと……好きですよね」

ネプチューンに目を見てそう言われた瞬間、終わったと思った。万が一の可能性に賭けたいけれど、

「その、有り体に言えば恋愛的な意味で」

と続いたのでどうしようもない。ここでキレて、全部なかったことにしてしまいたいと思わなくもないのだけれど、言われていることが事実だからそれだけは、できない。馬鹿みたいだ。

「ああ、そのような顔をさせたい訳ではなくてですね。応えたいとは、思っていまして……」

つまりそれって、俺と同じじゃないって意味じゃないか。でも応えたいって何だ。

「今の私は、貴方と同じ想いを抱いてはいませんけども……。でもそれを理由に貴方と疎遠になるのは嫌だ、と思ってます。なので……頑張りますから、私を貴方に惚れさせてもらえませんか?」

何、言ってんだ、コイツ。……そうは思ったけれど、俺はこくこくと何度も、頷いていた。
それをアイツは、優しそうな目で、見ていた。




――それから、俺は頑張った、と思う。惚れさせるって正直何したらいいんだよ! と最初はキレるしかなかったんだけど、色々考えた結果とにかくコミュニケーションを普通に取るしかないか、となった。頭を抱えながらどうにか文章考えて貰ってばかりだった連絡を取ったり、話の種になればといろいろ情報を仕入れてみたり。何度も投げ出したくなったけど、結局できなかった。そうやって何ヶ月も経って、何とか色々慣れてきて、ふと、気づいた。

「……俺がこういうこと言うのは、アレなんだけど」

ネプチューンを見る。優しそうな目で、俺を見てくれている。最初から、ずっと。そう、ずっとだ。だからこれがコイツの普通、ニュートラルだと俺はずっと思っていた。
でもそれって、俺だけの普通で、他の奴らへの普通じゃないんじゃない? そう、気がついた。だから、意を決して、聞いてみる。

「アンタさ、……とっくに、いや、最初から俺のこと、好きなんじゃない?」

返事を待つ。体感永遠の、ほんの数秒だ。

「バレちゃいました? 貴方が可愛くて、つい」

そうして返ってきたのが、これだ。……最低だ、大嘘つき! コイツ全部最初から、わざとじゃないか!

「貴方が私の事を好いてくれたと分かった時、本当に、本当に嬉しかったんです。……でも、だからといってすぐに気持ちを伝えてしまっては、所謂片思いしてる貴方って、もう見れなくなっちゃいますよね? だから、つい」

聞けば聞くほど、最低だ。俺にはここでキレてボコボコにする権利があるし、コイツは受け入れる義務がある。実際できるかどうかは別として。

「馬鹿。最低。……でも」

大馬鹿だし、最低だし、最悪のサディストかなんかだ。でも……でもやっぱり、俺はコイツが好きなんだよな。