白黒的絡繰機譚

五月蝿い恋煩いの分析結果を元にしたやり方は、

何かを観察するのは嫌いじゃない。勿論、メインは分析とかそっちの方だけど。他の奴らじゃ届かない場所へ、見つけられないものを見て、分析する。
俺が出来ること。他の奴らじゃ出来ないこと。ちょっとした優越感を抱えつつ、今日も。

「お前の視線が五月蝿い」

だけど、なんというか、なあ。それはちょっと、心外よ? お仕事でそれをする俺が、そんな素人みたいなことするわけないっての。
勿論、そう言われる理由にゃ心当たりはあるけどな?

「俺の、ねえ。どう煩いのさ」

だが、何のことやらさっぱりですわ、といった感じで聞き返す。俺のそれに、向かいの相手、ジェミニはご自慢の顔を顰めている。勿論、俺はそうされると予想してやってるけどな。
そういうとこ、多分お前は苛つくんだろうな? でも、それだけじゃないだろ?

「お前……。いや、もういい」
「ええー、言うだけ言ってオシマイって? そりゃ酷いっしょ」
「……」

ジェミニの表情ははっきりしてて楽しい。言ったら楽しくないから、言わないけどな。

「俺の視線が、どう煩いって?」

言いたくないんだろう。でも、俺がこう、煽るように聞き返せば、それが難しくなる。だって答えないのは、なんだか負けたみたいな気持ちになるもんな? 俺相手に、それしたくないんだろ?
ぞくぞくした、システム的に快楽に分類する信号が身体を駆け巡る。

「……俺に言いたいことが、あるんじゃないのか」
「何か言いたきゃ、その時言うさ。別に俺はハードみたいに面倒くさがりでもないしな。……ま、言いづらいことも、なくはないけどな」

気づいてんだろ、なあ。俺は気づいているって確信してる。それくらい聡くて、気づいた自分を信じていること、知ってるからな。観察して、分析して、他の奴らじゃ対処が出来ないトコを見つける。お前が嫌いそうなやり方。でも、俺にはそれしか勝率なさそうだったし?
卑怯? 汚い? だから何だ? 観察、考察。そんなもの何百とやったさ。それで選んでるんだ。とっても真っ当な、正攻法だろう?

「ジェミニはさ、俺が何を言いたいと思ったワケ?」

言いたかないだろうが、言ってみろよ。そうしたら正解だって教えてやるからさ。
……黙ってられなくなったってことは確信が欲しくなった。確信して、安心したくなった。自分だけじゃないってさ。そうだろ、ジェミニ?