白黒的絡繰機譚

アンタとなら、行ってやってもいい

「どうしましょう、大変なことになりました」

珍しく焦った顔のネプチューンが、俺の手を取りながらそう言った。

「その、実はですね。少々方針転換がありまして。簡潔に言うと、地球は滅亡する、んですよ」

何言ってるんだコイツと思った。けれど実際、こいつらにはそれをするだけの能力はある。尤も、その要が修理中らしいけど。勿論うちも全員でかかればできないこともない……と思う。まあ滅亡させる前にロックマンに阻止されるだろうけど。これだけ実績があるのに、未だ全く諦めてないっぽいうちの博士は何なんだろう。

「もうちょっと説明を? ……分かりました。私達は日々サンゴッド様の修復の為に色々と励んでいるわけですが……」

その割にはほぼ毎日俺に会いに来てるよなあ、と思う。でも黙っておく。

「その修復における実験で……ちょっと事故がありまして……。この星に影響のない範囲まで移動させたりする時間はないんです」

ネプチューンが俺の手を握る力を更に強める。今更だけど、俺の手ってのはちょっと正しくないよなあと思った。

「なのでその……私と、来てくれませんか」

どこへ、とは聞かなくても分かる。だって何度も何度も、言われてきた。全く現実感のないそれを、ずっとはいはいと聞き流していた。だってほら、多分、それって睦言、とか言われるやつ、だし。いや別にそういう時に話してたんじゃないんだけど。

「貴方には厳しいものだとは思いますけれど……」

そりゃアンタと違って、こっちは地上と水中しか対応してないからな。来て欲しい、と言われてる――そう、宇宙は水中みたいに冷たくて空気もないけれど、でも水中とは全然違う。構造からエネルギー補給関連まで、何もかもが問題ありまくりで、むしろ大丈夫なことを探す方が難しそうだ。
それでも、と言うようにネプチューンが俺を見つめている。多分逆なら、コイツは即答する。そう思えるくらいには、色々言われて、示されてきたわけだし。
だから、分かった、いいよ。と返事をした。

「……え? 良いんですか、本当に?」

驚いてる。逆にこっちが驚くんだけど。まあ、驚いてる以上に嬉しそうだけどさ。じゃあ俺からも1つ質問させてもらおうか。

「で? 何考えてこんな嘘ついたわけ?」

ネプチューンが固まる。アンタって本当、結構ろくでもないよな。アンタのとこの動向くらいうちの博士が把握してない訳ないだろ。爆発にしろ、大気汚染にしろ、何にもない普段どおりの普通の日だよ。アンタのその嘘以外さ。

「……ちょっと魔が差しまして……。咄嗟の時、貴方に選ばれるか、気になって……」

へえ、と短く返事をすると、ネプチューンが必死に謝ってくる。ちょっと面白い。
全くさ、今更試さなくったってお前に色々だめにされてるよ、俺はさ。……言ってやらないけど。