白黒的絡繰機譚

運勢結果はいつも

「占いのやり方を、教えて欲しいんだけど」

いつもの、変わりない口調でスターがそう言った。少し驚いたけれど、彼らしいお願いだと思い直した。私と違って、スターはこういう事が好きだ。
色々な、沢山のことに興味を持つ。彼自身はそれを飽きっぽいだけだと言うけれど、私は美点だと思う。

「私でよければ。……さて、どれにします? 古今東西、色々な占いがありますが……」
「うーん、どれが良いんだろうね?」
「どれも得手不得手ありますからね。何を見たいのか、によります」

何を見たいのですか、と私は尋ねる。スターは考える素振りすら見せずに言った。

「君のこと」

迷いのない、真っ直ぐな目で。……私が少し、眩しくて顔を逸したくなるような、貴方らしい目で。

「私、ですか」
「うん。君はいつも人を占うばかりだし。……勿論、僕自身の欲からくるお願いなのは、君も分かってるとは思うけど」
「貴方自身の、ですか」
「うん、……君が毎日を迷わないようにって。占いって、そういうものだろう?」

人間達は占いが好きだ。曖昧模糊の日々への道案内を求めている。気休めでも、不確かでも、無と有は天地の差があるからと。己のみでは決められぬ決断に、説得力と責任転嫁を求めて、私の元にやって来る。
その、他者を占い指し示すだけの私に、貴方はそんな事を言う。
貴方の、そんな所が、眩しくて堪らない。目を背けたくなるほどに、見つめたくて堪らない。

「そうですね。でも、なら貴方に教えられませんね」
「ええっ、何で?」

占い師は自分を占わない。客観的に見る事が出来ないから。そして、私は貴方も占わない。

「惚れた欲目は、占いにご法度ですよ。貴方、絶対どんな結果が出ても私に言えないでしょう?」

良いことだけしか伝えられない占いはご法度ですよ、と告げると貴方は困ったように笑う。

「……じゃあしょうがないなあ。言えないし、悪い結果なんて僕がなんとかしちゃうつもりだけど」

でも、折角ですしタロットの意味くらいなら教えてあげましょうか。貴方との共通の話題が増えることは好ましい……いえ、とても、嬉しいですし。
けれど結論としては、占いなんて要らないんですよ。貴方がいれば日々なんて別になんてことないんですから。