白黒的絡繰機譚

多分どっちでも変わらないこと

「脅し。じゃなかったら不平等取引、だなんて酷いと思いません?」

妥当だろ、と思った。顔に出ていたらしく目の前のロボット・ネプチューンががっくりと肩を落とす。

「ウェーブまでそんな風に思ってるんですか」

貴方にそんな事――脅迫や強請りによる恋愛関係の構築――はしてないじゃないですか、と嘆く。確かにそうなんだけど、やるかやらないかで言ったら絶対やる方だと思う。寧ろどうして今までされてないんだと疑問に思うレベルだ。……実は俺の記憶容量に残っていないだけだったりして。

「貴方にそんな事する筈がないでしょう」
「でも実際、そう思われてるんだろ? イメージっていうか、今までの行いが悪いんじゃないか」
「行いなんて、皆同じようなものですよ。私だけが突出して非道な手段をとっていたわけでなし」

スペースルーラーズってやっぱりそういう感じなんだな、と変な感心をする。まあ、俺達DWNよりずっと大規模でやらかしてたんだし、そりゃそうなんだけど。
それに、とネプチューンが続ける。

「壊して良いものとそうでないものくらい、分かります。貴方にだけは、絶対にしない」
「……へえ?」
「見事に疑われてますねえこれ。してないし、しませんってば!」

そうなんだよな。してないし、きっとこれからもしない。やりそうだしやってそうだけど。全部壊して、支配してしまえってプログラミングされてるのに。なのに、俺にはしない。俺だけにはしない。
そっと触れて、それだけで満足するような、真反対の接し方をする。それがなんだがむず痒かったのも、結構前の話になってしまった。
俺自身、まさかそうなるなんて思わなくて……やっぱり、本当はやってるんじゃないのかなあなんて、信じているけど信じれない気持ちになる。

「まあ、信じといてあげる」
「……本当です? それ」
「さあ、どうだろうな」

俺じゃ絶対に敵わないロボットが、俺の一挙一動に右往左往してさ。面白いな、なんて思ってしまう。そういう状況じゃないんだけど。俺にはそんなプログラミングはされてないのに、まるで、そう、こっちが支配しているような、そんな感じだ。
……でも、多分、このロボットは、

「貴方がどう思っていても、私は貴方を大切に愛してるんですよ、ウェーブ」
「……知ってる」

俺の考えなんてきっと、分かってるんだろうな。