白黒的絡繰機譚

言葉も結局はゼロとイチ

「俺のどこが好きなん?」

前後も、何もなく。小石のように転がった、その言葉。見下ろした横顔は、いつもどおりで、きっとあまり、深い理由があって聞いてきたわけでは、ないのだろう。
理由は違えど、俺もドリルマンも、そのような、突発的な発言が多い。……と言われる。言われた側としては、揃って首を傾げてしまうのだが。

「それを伝えるのは……かなり、難しい、と思う」
「そんな言えへんようなトコを」
「……。そうではなく」

変な、勘違いをされているような、気がする。
……言葉は、扱いづらい。元々、一人で地中にいるばかりの俺には、不必要であったものだ。キングも、俺をこのように作ったし、こうであることに、何も言わなかった。だから、どちらかと言えば、今の、言葉が必要になる状況が、俺にとっては、おかしいこと、だ。
だが、それでも、俺は、二進法を、不自由な言葉に、変換し続けている。

「ドリルマン」
「うん」
「……。……そういう、ところだと、思う」
「うん?」

伝わらない、伝えられない。もどかしい。けれど、ドリルマンは、怒ることも、呆れることもなく、俺を見上げている。安心する。もっと、好きになる。
そういう、そのような、ところが、突然の光のように、俺の何かに焼き付いて、離れなくなる。それをどう例えたら、どう説明すればいいのか、分からない。選べない。

「上手く、言えない。月並みな言葉に、なる」
「別にええんとちゃう? お互い、難しい言葉なんて扱いきれんやろ」

確かにそうかも、しれない。思考回路が複雑にしてしまっているだけで、実際のところはやはり、ゼロとイチのようにはっきりと、決まっているものだ。
曖昧だと言われているものも、結局はミクロやマクロの単位で、ゼロとイチに振り分けられるのだから。
どう括っても、振り分けても、ゼロとイチ。在るか無いか。ならば、ああ、答えなど決まっている。

「ならば……全て、だ。どことは、決められない」
「……お前なあ」

目を見開いた後、ドリルマンが、呆れたような顔をする。……不安に、なる。

「ムズいとか何とか言いつつ、そういう殺し文句みたいなの言うの何なん?」
「……?」

よく、分からない。言葉は、やはり扱いづらい。……けれど、ドリルマンは少し、嬉しそうなので、それは良いと思った。