白黒的絡繰機譚

これ以上惚れさせてどうするの?

それは無いんじゃないか、と言うとひどく驚いたようだった。
驚いたのはこっちだと言ってやりたい。おかしいじゃないか。なら最初から何もしなければ良かったのに。

「えー……いや、だって、なあ?」
「そもそも、だ。ならどうしてお前は日頃あんな風に振る舞っていたんだ?」
「それはもう、ジェミニちゃんへの愛がこう、抑えきれなくて?」

いつもの、慣れるどころか飽き飽きしてしまった口調でスネークが言う。好きだの愛してるだの、本当にそう思っているのか疑わしいような軽い口調で浴びせてきた。最初は新手の嫌がらせだと思っていたけれど、スネークは本当のことを隠すが嘘つきという程でもない。聞いているうちに段々と、何故か、それが頑張って茶化している本心だと気がついてしまった。

「その抑えきれないものを、俺は受け入れてやったんだが?」

俺はなんて寛大なんだろう。今すぐ撤回してやっても良いんだが、申し開きをさせてやっている。

「そこはもう、滅茶苦茶嬉しいんだけども! ……それとこれとは話が別っていうか」
「滅茶苦茶延長線上だろう」

じ、と見つめ合う。当たり前だが蛇みたいな目だ。みたいな、であって蛇ではないから苦手ではない、恐らく。それに気がつくのに、随分と掛かったが。
俺は気がついたというのに、どうやらその目の持ち主はまだ分かっていないらしい。敏いくせに大馬鹿野郎だ。

「……やー、ジェミニは苦手だろ」

何が、と聞き返すまでもない。
お前の見た目、能力、その他視覚と聴覚に響くものの殆ど全て。それを俺が苦手だろうと、そう言いたいのだ。

「スネーク」

これ見よがしに息を吐く。そうやってお前は、本心を隠そうとする、いつだって。

「俺は触れられても嫌だと思わないし、簡単に壊れないし、一度決めたことを反故にする気はないが?」

気持ちが通じ合ったけれど、今のままでいたい、変わりたくない。
俺の肯定に返ってきたのはそんな言葉の羅列。本心からそのような停滞した、変化を望まないのだと思っているなら何もしないのが最善だということは、お前が一番分かっているだろうに。溢れて抑えきれなくて、暴力的なまでになっているんだろう。
だから、敢えて俺は言う。今更そんな気遣いと保守は何も意味を持たないだろうと。

「……今、俺って相当熱烈な告白された?」

なに、普段のお前程じゃないさ。