白黒的絡繰機譚

言わなきゃわからない

「悪い、俺のせいだな」

帰宅して、E缶を飲んでいたらそう言われた。
深刻なエラーが発生しています。そんな表示が見えた気がしたが気の所為だった。目の前の機体と発話された文章と、申し訳無さそうな声のトーンが結びつかない。
だって、今、俺の目の前にいるのはジャイロだ!

「……な、何が?」
「……お前が最近疲れてる、つまり消費エネルギーが増えてる原因だな。ったく、余計な事をするアホだ」

バレてたんだ。確かにこのところ消費エネルギーが増えている。稼働時間が増えているから。それは別に仕事が増えたわけではなくて、仕事以外のことをするようになってしまったから。それとその原因に、ジャイロは気がついている。

「べ、別に俺は」
「アイツらって強引だからな。そもそも俺のことを何処から知ったんだか。でもお前の事は確実に俺経由だ。悪いな、アイツの話に、ついウチにも似たような造りのがいるとか言って。それでだろ」

はあ、とジャイロが溜息を吐く。ああ、本当にしっかりバレている。
そうだと聞いたことはないけれど、ジャイロの言う通り、多分きっかけはそこからだろう。飛行型が飛行型に、水陸両用が水陸両用に。異星の同種っていうのは、色々と興味深いんだろう、多分。

「お前もな、一度しっかり言った方が良いぞ。好き勝手にさせてると調子に乗るからな」
「しっかり言った方が……」

そうだ。俺はまだ全然言えてない。
あんなにも毎日、言われているのに。俺は何も言えずに、黙り込んで。それでも別にいいと思っているのか、態度に出さないだけで不満があるのかは分からないけれど、それを咎められたことはない。
でも、言えるなら言った方がいいに決まってる。分かってる。

「そう、しっかり言った方がいいぞ」

ジャイロが頷く。

「迷惑だって」
「好きだって」

顔を見合わせる。……あれ?

「……まて、ウェーブちょっと待て。お前本気かそれは? もしかしてお前はあのアホウドリと違って半魚人にクソ煽りとかされてないのか?」
「え、あ、その……」

顔が熱くなる。内部温度が上がってる。そうかジャイロは俺が自分と同じように、迷惑をかけられているんだろうと思って謝ったのか。そりゃそうだ。そうでもしないとジャイロが人に謝るわけがない。
なのに俺はちっとも気が付かずに「なんだジャイロも色々言いつつそういう感じなのか」とかちょっと思ったりして。頭湧いてるのか?!

「やっぱり碌なことしねえあの鳥!!」

絶叫を聞きながら、俺は顔を隠すしかなかった。