白黒的絡繰機譚

貴方のためのポジティブ

「私達、みんな似ていない姿をしているでしょう? ですから、似た姿に好意を抱いてしまうんですね。ほら、ジュピターとか」

なんで俺なんか、と膝を抱える俺にネプチューンが告げたのがそんな話だった。一瞬そういうものなのかな、と思ってしまったが違うなと確信する。

「口からでまかせだよな、それ」

顔を上げてそう呟く。ネプチューンは、いつもどおりニコニコしている。
似ているって程俺達は似てないし、ジュピターとジャイロなんて空を飛ぶ緑色ってところ以外は違いだらけだ。あとあれって好意ではないんじゃないか。

「でまかせ、という程でもないと思いますけどねえ。実際、私と貴方は少し似てるでしょう? ほら、この装飾とか」

ネプチューンが示す先は、お互いの頭部に付いた三又槍みたいな装飾だ。

「……偶然だと思うけど」

俺を設計した時に、まだ博士はSRNを発見していなかった筈。だから偶然だ。
偶然にしては似すぎてる気もするけど。別に何か用途があるわけじゃない、本当に装飾だし。それでも、プラスの、ポジティブな感情を溢れさせるには弱いと思う。

「偶然が私達に共通点を与えたのなら、それはそれで素敵じゃないですか」

ポジティブだなコイツ。何を言っても返してくる。偶然だの何だの、でまかせばっかりだけど。

「そういうの好きだな、アンタ」
「ええ。……それに、偶然でも何でも理由があると安心出来ませんか?」

……ああ、そういうことか。コイツは俺のために、まるで馬鹿みたいなことをいちいち返してくれるのか。俺が得体のしれないものに怖がらないように、怒らないように。
生まれも用途も違って、性格だって似ていない。共通点はあるにはあるけれど、それこそさっきのみたいに説得力の弱いものばかり。
逃げ続ける俺を辛抱強く追って、説得して、色々なものを与えて。似てない。本当に俺とは似ていない。

「アンタのそういうとこ、俺とは全然似てない」
「似てないからこそ惹かれることもありますし。全部同じなら鏡を見てればいいですからね」

それはそうだと思う。全部一緒なら、絶対に好きにならない。全部違ったら、近寄らない。少し似てて、少し違うくらいが多分丁度いい。
……ああ、だからコイツは俺が好きなのか。納得はできないけど、分かる気はしなくもない。

「貴方だから好きですよ、ウェーブ」

俺も、なんて言えるわけがない。俺はコイツと違うから。でもそれがきっと、良いんだろう。
無理な返事の代わりに、いつもされるように手のひらに触れた。……多分それで、伝わる筈だ。