白黒的絡繰機譚

秘密の共同

そもそも、現状が想定外なのはある。
確かに俺は、この空中庭園を占拠する為のロボットだが? でもそれは別に管理ロボットになるということと同義ではないのだが?

「――軽く、こんな感じだが……大丈夫かい」
「大体は。手が空いた時でいいからデータも頼む」

空中庭園。何度でも言うが俺はあくまで占拠後の入園料徴収のためにここに割り振られたのであって、草木や環境の整備と維持を行うロボットじゃない。が、現在はそうも言ってられず可能なことは兎に角自分でどうにかしなければいけない。素人が立派に庭園管理人になるまで、なんて本でも出したら売れないだろうか。
勿論自分だけでは限界もある。ので、数ヶ月に一回は外部のプロを呼ぶことにしている。今回はDRNのホーネットマンだ。流石本職本業なだけあって、知識も手際も素晴らしい。

「勿論。しかし……この広さを、二人で?」
「二人?」
「あの緑色の……鳥のような彼と二人だろう?」

はあ? と思わず大声が出る。あの鳥頭は外で自分も手に職があると喧伝してるのか。ホーネットマンは本気で驚いている。

「違うのか。この前こちらに来て、色々と指導したものだから……」
「それとこことは関係ないだろう」

とは言っても、ここに来たことのあるロボならアイツを見ている可能性は高い。何せいない方が少ない。今日は珍しくいないが。結びつけるなという方が無理がある。結び付けないでほしいが。

「その……すまない。プラントが俺達と同じだと言うから、そうなんだと」
「……同じ?」

共同管理、ということだろうか。間違っているが。
……ああ、そうだった。ホーネットマンのところは、あの花のようなロボットと共同管理だった。見に行ったことはないが、まあ同業者なので話は入ってくる。

「! いや、忘れてくれ……」

ホーネットマンが気まずそうに目を逸す。……これは、恐らく触れない方が良いやつだろう。火傷はしたくない。

「とんだ嘘つき鳥だ、全く」
「今はそうかもしれないが……次、俺が来る時には本当になっているんじゃないか」

彼はとても真剣で熱心だったよ。
ホーネットマンがそう言う遥か遠くに、聞き慣れた五月蝿いエンジンの音が重なっていた。
もしそれが通り過ぎずに降りてくるのなら……さて、どういう言葉から浴びせるべきか。