白黒的絡繰機譚

君の手で使えるようになりたい

「これは……まだ使えるな。あれも合わせればかなり取れる」
「そうだね。でもこっちはどう?」
「分かっているだろう。勿論使える」

朝から晩まで、ぼくたちはここにいる。仕事だからね、当然さ。今はもう拘束時間外だけど、半壊のソファに腰掛けて、合間にジャンクマンが集めた戦利品の品定め中だ。彼の目は本当にすごくて、みんながそうならこのごみの山は平地のままだったのかも、なんて思ってしまう。

「全く、人間は使えるものばかり捨てていく」
「……人間は嫌い?」

そういえば君は悪のロボットだったなあ、なんて今更のように思い出す。刑務所襲撃からの世界征服だもの、とっても悪だ。
なのに今はぼくと仲良くしてたりする。何がどう転ぶかなんて、やっぱりわからないね。

「別に人間自体が嫌いなわけじゃない。ただ、モノを捨てるのが早すぎる」

君の手には、頭が潰れたネジや伸びてしまったバネが沢山ある。どれもこれも、一つだけじゃ取るに足らないものだ。
でも、何かと合わせれば、元よりずっと活躍できるようになったりする。僕はジャンクマンがあの大きな手でそれを成し遂げるのを見た。
あの時、まるで博士みたいだと言ったぼくから顔を逸らした君は、どんな表情をしていたんだろう。

「オマエこそ、嫌いじゃないのか?」
「まさか!」

即座に否定する。それだけは、絶対にない。
勿論、ジャンクマンの言いたいことも分かる。人が避ける仕事は、従事者も避ける人間がいる。面と向かって悪口を言われたことだってある。裏だともっと何かあるのかもね。
……それでも、僕は人間を嫌ったりしない。

「……そうか」
「なんだか残念そうだね」
「嫌いなら、連れ帰れた」

これは使える、と選り分ける時と同じような声で君がそう言った。やっぱり君は、悪のロボットだ。

「……駄目だよ、それは。うちの兄弟たちが黙っちゃないさ」
「ロックマンと世界を相手にするよりは簡単そうだがな」

それはそうかも、なんて思ってしまったり。悪のスケールは大きい。

「でも……もし、君がまだいつかのぼくを見て『まだ使える』って思ったら……」

その時は、絶対に連れ帰って。