白黒的絡繰機譚

ErrorErrorError!

両片思いかつジャイロが拗らせている。

これはエラーである。

「こっち向けよ、プロペラ」

エラーというのは厄介なもので、改善されない限りひたすら同じ警告を出し続ける。お陰で俺のログはそればかりだ。
残っていることすら気分が悪くなるようなエラー。けれど逐一消していくには数が多すぎる。

「おい、無視すんな」

腕を掴まれただけでエラーが出る。全く厄介だ。そのうち何もしなくてもエラーまみれになるのかもしれない、と思うとぞっとしない。

「プロペラ!!」

鳥の声が今日も煩い。こんな声を聞き続ければエラーも出て然るべしか。毎日毎日飽きないもんだ。
……本当は理解している。エラーの原因を叩き出して、解決の為の一言を告げれば、きっともう発生することはない。けれど、俺は永遠にこのエラーを発生させ続ける。
こんなにエラーを吐き出すロボットなんて、もう壊れているようなもんだろうな。

「……」
「おい!」
「……」
「お前、いい加減にしろよ」

ぎちぎちと、腕の保護スーツと下の人工皮膚が悲鳴を上げる。けれど、こんなもんじゃエラーすら出ない。苛立って瞳孔がかっ開いた赤に映る俺の顔は、どうにか普段どおりだ。
目さえ取り繕っておけば、コイツは絶対に気がつかない。気づくわけがない。そうでないと困る。

「そりゃこっちの台詞だ。毎日毎日、俺の邪魔と罵倒に熱心だこと」

それのお陰でこちとら毎日エラーまみれだ。そんな真綿で絞め殺すようなことをしなくたって、お前のスペックなら俺を一撃でスクラップに出来るだろうに。そうしたら、こんなエラーとはおさらばだ。

「……っ、うるせぇプロペラの癖に」
「無視するなと言ったり、煩いと言ったり……。全く、何なんだ。あといい加減に離せ」
「俺に指図、するな」

目を逸らせない。今すぐ飛んで逃げてしまいたい。捕まるのは分かっている、それでも。エラーが加速度的に増えていく。

「……っ、じゃ……プロペラ!今日は出直してやる」
「それ敗走者の台詞だぞ」

なんだかやけにあっさり引き下がった。ああ、これでエラーも少しは減るだろう。息を吐いて、俺はどうしてか空を見てしまう。
――こんなに馬鹿にされて、嫌われて、それでもエラーが積み上がる。深刻な、致命的なエラーだ。痛いほど分かっている。でも、俺は。
お前に「好きだ」なんて言える筈もない。でも、お前に「嫌いだ」とも言えない。正直にも嘘もつけない俺はただ。エラーを抱えて埋まっていく。
ああ、いっそ馬鹿にするこの羽根を剥ぎ取って、地面に落としてくれないか。なあ、ジュピター。